【ヒプマイ】オートマタ・イストリア -17章- ナカナオリの仕方

842話 なるほど、これが思春期…… ページ12

自分からは言いにくいのかな？ならボードゲームやりたいです、って声を掛けた方が良さそうだ
──そう思い、彼の名前を呼ぼうとした。しかし隣で微笑んでいた一郎さんがそれに気付き、自分の口に人差し指を当てて“言わないで”とジェスチャー。

何でだろうと横にいる二郎さんに顔を向けると、同じく笑っていて静かにウンウンと頷いた


悪意の無い表情。温かみを感じる笑みを浮かべている兄達は、きっと三郎さんの成長の為に敢えて見守るだけにしているようだ。ならば私も見守る事にしよう

ドキドキしながら誤魔化す為に何回かお茶を飲みながら三郎さんを待つ。すると暫く経ってから三郎さんが意を決した目付きになり顔を上げた


｢っ、その、えっと……い、一緒にゲーム、しよ……｣


何回も瞼の奥で見え隠れするオッドアイの瞳。返ってくる答えなんて分かりきってる筈なのに、不安の色が消えずに小動物の様に震えている
2人の兄は漸く出た言葉に口角を上げる。なんと微笑ましい光景か。これが兄弟なのか、と胸がじわっと温かくなって釣られて私も笑う


『はいっ、やりましょう！』

｢っ……！！｣


待ってましたと言わんばかりに大きい声で返事をすれば、三郎さんはパァッ、と無邪気な喜びの表情となった
いつもクールで淡々としている彼にしては、このキラキラ輝く顔は中々レアなのでは？
記念に写真を撮りたい所だけど、絶対に不機嫌になってしまう。我慢だ私


｢じゃ、じゃあゲーム持ってくるから……｣


自分でも喜んでいる表情をしていると気付いたらしく、決まりが悪そうに顔を顰めて自分の部屋へと足早に向かった。素っ気ない態度なのに一郎さんと二郎さんはニコニコを越えてニヤニヤしている


｢うんうん、ちゃんと言えたな三郎｣

｢アイツもう少し素直になればいいのに。可愛くねぇ｣

｢中学生って思春期真っ只中だから仕方ねぇだろ？あれくらいが可愛くていいと思うぜ。A悪ぃな、ちょっと気を使わせちまって｣

『いえいえ！私自身、人と接する経験が浅いので勉強になります……！！』

｢あっはは、大袈裟だなぁ｣


明るく笑った一郎さんは、何故か心配する様な暗めな表情へと変える。そして三郎さんが出ていった扉を見つめてポツリと悲しい音を呟いた


｢……三郎の奴、学校の友達ってのがいないらしくてな。本人は別にいらない、なんて言ってるんだが、兄としてはそれが心配なんだよ。だから遊びに誘うとか、そういう経験させたいんだ｣

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