763話 私はそう思うんです ページ26
｢──へぇ、MTCと麻天狼の皆さんで旅行ですか｣
『はいっ！とっても楽しかったです。あぁ勿論皆さんにお土産買ってきましたよ！』
｢貴女ねぇ……態々コンビニで買わなくてもそれで良かったじゃないですか……｣
『お菓子ですからご飯物じゃないとお腹いっぱいにならないかなぁと……』
｢お人好しも困りものですね……。にしてもその2チームで旅行とはネタの宝庫ではありませんか。神宮寺先生がいる時点で乱数は行きたがらないと思いますけど｣
『ですよね……』
事務所に向かう道中、小説のお手伝いが出来るかもと幻太郎さんに旅行の話をした。予想通り幻太郎さんは興味を示してくれて、メモ帳を取り出し何かを書き始める
心の中では皆で行きたいと思ってたけど、幻太郎さんの言葉にやっぱり難しいよね……と肩を落とす
すると何かを察したのか、幻太郎さん｢ふむ……｣と思案する仕草をした
｢小生はまだTDDの仲を詳しく知りません。……が、過去の姿は見てきました
あれ程仲が良く、攻守共に完成されたチームなのにも関わらず解散、しかも犬猿以上の仲になっているのには何か陰謀が絡んでるのでは無いかと感じます｣
『陰謀……ですか？』
｢えぇ、スポーツや音楽グループ全てに言える事ですが、1つの方向性の違いでチームがバラバラになる事自体稀ではありません。なのですがタイミングといい、あの険悪な関係はそんな話で出来るモノじゃない｣
『……その事なんですが……皆さん勘違いをしてるんじゃないかと思うんです……』
｢勘違い？｣
真剣な表情で語る幻太郎さんに、人間観察が得意でもなんでもない私が勇気を出して言葉にする。これは願望が入ってるのかもしれない、皆を知らな過ぎてるのかもしれない
それでも幻太郎さんは否定はせず、私の次の言葉を待ってくれた
『一郎さん、左馬刻さんを憎んでいる様に見えるんですが、左馬刻さんは完全に道を外す事をしないと思います。それに……なんて言うんですかね……まだ一郎さんは心のどこかで迷ってると感じます
だから4人は言葉を交わさないまま、すれ違いをしてしまって今になってるのかなって……』
｢確かに彼らは一癖も二癖もあり言葉足らずな方々なのでありえる話ですね。嫌悪感が全面的に出てるせいで顔すら合わせず、すれ違いの溝は段々深まっていく
──と小生は思っていました｣
最初険しい表情だったのに、最後は優しく希望を抱かせる様な微笑みを浮かべた
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作者名：刹那 | 作成日時：2022年8月23日 15時
