【ヒプマイ】オートマタ・イストリア -10章- それは私にとって幸せな時間。心休まる場

516話 さよならはまた会う為のおまじない ページ25

《もうんな時期になっちまったんだな。早ぇな》

《楽しい時間は早く過ぎるって言うだろ？アレと同じだよ》

《ハハッ、まぁ確かに面白かったわな》

《そうだろうよ。俺に無理難題押し付けやがって》



人が雑然と賑わう祭りという空間の中に、1人のサングラスを掛けた怪しげな男がベンチに座り、焼きそばやフランクフルトを食べながらスマホの動画を見ていた
異質な光景でも、祭りに酔った人達は気にする事無く通り過ぎる


《やっさん、どこ行くの？》

《俺ァ遠い所に行くんだよ》

《会えない？》

《どうだろうなぁ……》


その動画には白衣を着た大勢の人が映っており、不自然に涙目の小さな青髪の女の子も居た。その雰囲気は誰かを見送る時のモノで、別れ際の映像と思われる


《いやだ。やっさん離れたくない》

《しゃーねぇだろ？やっさん、仕事で期間限定で居ただけだし、時期が来たら帰らなきゃいけねぇんだよ》

《センパイ……。そんな言い方しても分からないっすよ？》

《やだやだやだっ！》

《いつも良い子なのに今日は駄々っ子だなぁ。そんなに俺とさよならするの嫌か？》

《会えなくなる……》

《あのな、さよならしてくれねぇと俺が困っちまう。さよならしねぇとまた会えないだろ？》

《どういうこと？》

《さよならはまた会う為のおまじないなんだよ。だからお前がさよならしてくれないと、俺はお前さんに会えなくなっちまう》

《うーわ、詐欺師顔負けの詭弁》

《でもなんかオシャレっすね！！》

《俺はまたお前さんに会いたいが、お前は違うのか？》

《違う！会いたい！私もやっさんに会いたい！！》

《じゃあさよならしてくれるよな？》

《うん！！やっさんさようなら！寂しいけど、我慢する！》

《ハッハッハッ！良い子だなぁ。また会える日、楽しみにしてんぜ？》

《お前技術開発より、詐欺師似合うな。めっちゃ悪い顔してんぞ》

《ハハッ、嘘も方便、嘘は真の骨なりってなっ。コイツを傷つかせねぇ為のモンなんだから良いじゃねぇか。それに、いつになろうが会えれば真実だしな》

《そうだけどよ……》

《んじゃ、そろそろいかねぇと。お前ら元気でな》

《お前もな》

《やっさんがくれた秘密のアドレスで写真とか動画送るっすからね！》

《おう頼むわ。あれ地味に楽しみにしてっから》



動画はここで止まった。男は徐にスマホを下に降ろすと、視線を前に向けた。その先には仲良くたこ焼きを食べあっている、成長した青髪の少女がいた

517話 俺とあの馬鹿の約束→←515話 覚悟……。ですか……

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す