【ヒプマイ】オートマタ・イストリア -10章- それは私にとって幸せな時間。心休まる場

503話 めっちゃ気を使ってくれます！！？ ページ12

お金を払い、玄関から建物に入っていく。中は暗く、点滅している蛍光灯や非常階段の緑色のライト、非常ベルの赤ランプだけが私達に許された灯り
待合ホールには乱雑に置かれた椅子や机があり、何者かが暴れた様に思える


いつどこで襲ってくるか分からない雰囲気に自然と体に力が入る。途中でリタイア出来る様に扉が各所にあるらしいけど、左馬刻さんと理鶯さんが手を繋いで下さってるので大丈夫そうだ


スン、と鼻で吸えばアルコールや腐った様な生臭い不快な臭いが嗅覚を刺激してくる



『うわぁ……。臭いとか見た目、何となく施設と似てますね……』

｢おっしゃリタイアすっか｣

｢そうですね。リタイアの扉は左側らしいですよ｣

｢貴女に精神的苦痛を与える場所ならば、一刻も早く出なければならない。行くぞ｣

『あっ、え、ちょっ皆さん！！？』


何となく思った事をポロリと漏らせば、一斉に正規ルートから外れ、リタイア用の扉に私を引っ張り進み出した


『じょっ、冗談ですよ！全然大丈夫ですから！！』

｢小官達に気を遣わなくていい。他にも楽しめるモノはあるのだから、其方に向かおう｣

『本当ですって！！折角のお化け屋敷なんですから、進みましょっ！！』

｢無理すんじゃねぇよ｣

『無理してません！絶対叫びますけど、それはトラウマとかじゃないですからね！！楽しんでるだけです！！』


ジタバタ暴れて2人の手を振り解こうとする。それはしっかりと握られている為無理だったが、進む足は止まり扉の方に向いていた顔を私に向けた

僅かな光で照らされた3人の表情は、眉を顰め訝しげなモノだった


｢それは本当なんでしょうね？｣

『はい！確かに施設は私の恐怖の対象ですが、ここは違いますっ。別物です！それに皆さんがいてくれますから、怖いかもしれませんが完走でき――』

｢ｧ――ア゛ｧ……ｯ！！｣

『あ゛ぁぁあッッ！！！？』


必死に説得している最中、耳元で男の助けを乞う様な呻き声が聞こえた
反射的に可愛くない声を出し振り向いたが、姿は無く呻き声も聞こえなくなった


｢ハハッ、何が大丈夫なんだよっ。めっちゃビビってんじゃねぇか｣


左馬刻さんの笑う声で3人の方に振り向けば、他の2人までも肩を揺らしクスクス笑っていた


『何で3人共驚かないんですか！？声聞こえたのに姿無いんですよ！！めっちゃ近かったのに！！』

｢驚きはしましたが、貴女程ではありませんよ｣

｢これが最後まで続くがどうする？それでもいいなら進もうか｣

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