【ヒプマイ】オートマタ・イストリア -序章- (ページ25)

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23話副作用ページ25

先程まで苦しみから逃げる為必死に暴れていた少女は、突然糸が切れた玩具の様に動かなくなった

気を失ったかと顔を覗き込むと目はしっかりと開いている
──しかしその目からは生気を全く感じなかった

異変に気づいた親方はマイクを仕舞い少女に近付く

｢おい｣

話しかけても返事は無く、瞬きはするが此方を見る様子はない

ただ何処か1点を見ている

舌打ちをした後、口に貼ってあったテープを乱暴に引き剥がす。すると剥がしたと同時に口から血を吐き出した

口が開放されるとブツブツと呟き出した

『生きたい生きたい──』

壊れたロボットの様に繰り返す
話しかけようが叩こうが止まる事は無い

不気味な様子に下っ端達は足が竦む

｢生きたいか？｣

親方がそう聞くとピタリと止まり倒れこんだまま視線だけを向ける

｢生きたいならコイツのマイク奪えるか？｣

ポケットから観音坂の写真を取り出し少女に見せると、反応こそ見せないが写真は見つめていた

その目は何も光すらも映さない壊れたブリキの目

｢出来れば殺って欲しいところだが……それは無理だろうし、マイクを奪って来たら生かしてやるよ

まずは縄外さねぇとな｣

下っ端達に命令し縄を解いた
解放されても暴れず、大人しく写真を受け取り立ち上がる

｢おっと今はもう日が出ちまった
やるなら夜にしな｣

少女は何も言わない

｢んじゃ夜までそこで待ってな。俺らはリビングに居てっから｣

男達は少女を置いて部屋を出ると、逃げられない様に扉に鍵をかけた

・

リビングに戻るとソファに身を預けた親方。その後ろから、恐る恐る下っ端が話し掛ける

｢あ、あの……さっきのは一体……｣

｢さぁな。だがそのマイクは高く売れそうだ｣

｢やっぱり副作用っすか？｣

｢効果はイマイチ分からねぇが、死に対する恐怖を増幅させる、もしくは心の中の願望を暴走させる、って感じだろうな｣

親方はタバコをくわえ火をつけた
紫煙をふぅと吐くとニヤリと笑みを浮かべる

｢能面みてぇな薄気味悪ぃ女になっちまったが…今まで以上に働いてくれるだろう

フッ…夜が楽しみだなぁ……｣

・

日が落ちると親方達は少女の元へ行く
鍵を開け部屋に入ると少女は立ったまま写真を見続けていた

部屋から出た時と位置が全く変わっておらず、ずっとこの体勢で過ごしていた様に思える

｢おい時間だ。マイクを取ったらここに来な俺が待ってる｣

メモ書きを差し出すと少女は受け取り何も言わず部屋を後にした