シ ョ ー ケ ー ス 越 し【 うらたぬき 】

sweet8.気持ちの名前 ページ8

｢…ちょっとクリーム多すぎるかも？？美味しいけど｣

｢うーん、そっかぁ…甘すぎてもくどいよね〜〜｣

｢でも見た目はめっちゃ可愛いから子供受けしそう｣




…何をしてるのかって？

今、Aの試作のケーキを試食させてもらってます。


…話飛びすぎだよね。わかんないよね。



現在、あの運命(？)の出会いから２週間。

俺はA(名前呼び捨てになってタメ口にもなった)の夢のため、こうして日々意見を出させてもらっている。


ただし、お店に客がいない時しか厨房が使えないので、昼営業の日は夜に、夜営業の日は朝に来るのが主である。
休みの日は丸一日使ったりもしている。

なんとこのお店は驚くほどホワイト企業で、Aのためにお店の厨房をわざわざ貸してくれるのだそうだ。
すごい。


まあ俺も当初は、可愛い女の子が作った可愛いスイーツがタダで食えるぜぐへへなんて下心がなくもなくもなくもなかったわけだが。


…すまん←



今は、彼女と二人っきりでいられるこの時間がただただ楽しい。

…ずっとこの時間が続けばいいのにと思うけど、やっぱりお互い忙しいし、そんなに時間がとれるわけでもなくて。


｢…あ、そろそろ時間かな｣


時計を見やったAが、そうぽつりと呟いた。


｢もう？…わかった、またね。頑張って｣


少し名残惜しいけど、こういう時間には必ず終わりが来る。


｢ありがと。ケーキ、また改良してみるね！｣


そう意気込む彼女に、うん、と微笑み、店をあとにしようとした。


｢あ、待って！｣

｢どした？｣


店のドアに手をかけようとした瞬間、呼び止められて、忘れ物でもしたかな、と振り向く。


｢渉くん、いつもありがとっ！｣


そう、思いっきり笑ったAはやっぱり、すごく魅力的で。


渉くん、って名前を呼ばれるたびに胸が高鳴るこの感覚はやっぱり＿＿。



｢俺のほうこそ｣



でも、この関係が崩れるのが嫌だ。
＿＿だから、今はまだ伝えらないから。


…いつか言えるようになるその時まで、この気持ちにはそっと鍵を掛けておくんだ。


少しアンティークな店のドアが、キィと音を立てて閉まった。




ああ、まだ別れたばっかりなのにな。

…早く君に会いたい。



＊＊＊＊


占ツク開いて目を疑いました…


まず

・お星様が黄色に…！
・1000hit越え！
・順位がつきました！
・沢山の評価やお気に入り
・暖かいコメントまで…！


皆さんありがとうございます！
これからもよろしくお願いします(*´`)

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