シ ョ ー ケ ー ス 越 し【 うらたぬき 】

sweet29.もしも〈side.夢主〉 ページ30

＿＿こんなに幸せでいいんだろうか。








嬉しそうな笑顔を浮かべて店を出ていく最後の客を眺めながら、ぼんやりとそんなことを考える。





渉くんに会える…！と思って急いで仕事を終わらせたため、約束の時間よりだいぶ早くなってしまい、なんとなくぼーっと過ごしていた。






⋯壁を隔てた先には、まだ従業員が何人かいるけど、今この事務室にいるのは、私ただ一人だけ。






何もせずに一人でいると、たまに考えてしまうこと。





いま、幸せなのはとてもいいことなのに、いつか⋯、いつか、とてつもなく大きな不幸が、私や渉くんを襲うんじゃないか⋯って。







怖い、怖いよ。





また、あの時みたいに私は⋯







.







.








｢⋯Aちゃん？｣





ぱっと室内の電気がつけられ、不意に後ろから掛けられた声にはっとして振り向くと。







｢⋯あ、玲乃先輩⋯お疲れ様です｣







小さくぺこりと頭を下げると、私のいつもとは違う暗い雰囲気に違和感を感じたのか、驚いた顔をする玲乃先輩。






｢⋯どうかした？悩み事なら話聞くよ？｣






｢⋯いえ、そんな大事なことじゃないんです。ただ⋯ちょっと色んなこと考えちゃって｣







そう言って首を横に振るも、玲乃先輩は。







｢話してみなよ。ちょっとは楽になるかもよ？ほら、ちょうど営業終わったしあっちで話そ｣






すると、私の手を軽く引っ張って、事務室を出た。






｢⋯ありがとう、ございます｣







⋯小さくそう言えば、振り向いた玲乃先輩がニカッと笑った。




＊＊＊＊


更新遅くなってすみません…！ちょっと忙しかったので…

そしてなんと、気づいたら殿堂入りしてました…！皆さん本当にありがとうございます！

お気に入りもたくさんありがとうございます！

これからもよろしくお願いします！

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