【炎炎】第7の日常 弐

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鏡合わせの2人。
斬撃には斬撃を。打撃には打撃を。
同種の攻撃で打ち消し合う。
互いの呼吸を読んで、次の手を打つ。

まるで、踊っているようだと思う。
この状況でこんな事を考えているのは
間違いだと流石の自分にも分かる。

それなのに、そう思わずにはいられない。
葵の動きが手に取るように分かる。
今まで分からなかったものが、見える。


向けられる殺気の大きさ。

抱え込んだ怒りの深さ。


掬い取れなかった感情が紅丸に牙をむく。
だから、コイツを止めないといけない。
遅くなったが、腹を割って向き合わないといけない。

しかし、それが分かった所で、戦況は何1つ変わらない。
痛む額に怒りが引っ張られるのを、必死に抑える。
次の攻撃に出る葵をけん制の為、火球を放つ。


『夜凪(よなぎ)』


しかし、葵を中心に黒い円が発生する。
放った火球が一瞬で消え、静まり返る。

あれは、炎なのか?
ゆらゆらと静かに揺らいで見せる黒。
もう一度火球を放つが、やはり一瞬で消え去る。

今度は生き物の様にうねりを上げ、襲い掛かる。
紅丸は、後ろに飛ぶが、ほんの少し黒が左腕を掠る。

熱くはない。しかし、左に一切力が入らない。
熱を持たず、熱を奪う炎。

いつの間にそんな使えるようになったんだ

能力を使ってみるが
やはり、こちら干渉を受け付けない。



「ﾁｯ。面倒くせぇな」


地上戦は分が悪いと判断し、炎から逃げるように纏に乗る。
しかし、乗っていた纏を撃ち抜かれる。
空を睨めば、未だに刀が旋回している。
忘れたころに、お馴染みの手。

つくづくやり辛い相手だと思う。
肉弾戦に持ち込めれば、紅丸に勝ち目はある。
しかし、そこまでどう持っていくかが問題だ。

懐に入ろうにも、近〜中距離はあの炎がカバー圏内だ。
下手な炎では、無効化されるだけだ。
もし、仮にあの炎をどうにか出来たとして
葵が隙を見せるとは考えにくい。

要は、ほぼお手上げ状態だ。
かと言って、このままやられっ放しとも行かない。

持久戦は、葵に分がある。
葵の体質上、発火限界はないに等しい。
相手の熱を奪い、発火限界を早める。
そして、自分の活動限界を先延ばし、戦い続ける。

しかし、葵自身にも限界はある。
炎を酷使し続ければ、必ず反動が出る。

内容は個人差があるが、決して安い物ではない。
故に、熱を奪い戦い続けるという事は
枯渇と潤沢を繰り返す。

つまり。何度も死にかけるのと同義なのだ。

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