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暖簾を潜る。
框に腰掛け、大福を1つ摘まんで口に運ぶ。
「甘ぇ…」
隣に置かれる湯呑。
首だけで振り返れば、葵が。
「ジジィ共はもう良いのか?」
『うん。大方はね』
「そうか」
続かない会話。
紺炉ならと考えてみるが
モヤモヤとした感情だけが沸く。
口に残る甘さに、吐き気を覚える。
不意に頭を触られ
がばっと立ったままの葵を見上げた。
「おい」
『ゴミついてる』
「自分でやる」
と、葵の手を押し退ける。
『そう言って、結局やらないでしょ?』
「……やるし」
『嘘つかないの』
押し退けたはずの手がまた来るので、葵の好きにさせた。
髪を梳いて、流れていくのを繰り返す手。
不覚にも、それが心地いいと思う。
『綺麗な黒髪ね』
「男に綺麗は可笑しいだろ」
『それでも、綺麗よ。ヒカヒナの次に綺麗』
柔らかい顔をする葵を、こっそりと見た。
お前の方が綺麗だと、喉まで出かけてお茶と一緒に飲み込む。
未だに髪を弄る手を止めないままの葵が
『第8の事、どうするの?』
と、続けた。
「どうもしねぇ。皇国の言うことなんて一々聞いてられねぇんだよ」
『また、そう言う…』
「あぁ?文句なら…『受け付けないんでしょ？』ﾁｯ」
言いたい事を先読みされた事が面白くなくて、そっぽ向く。
その時、葵の手から離れた髪たちが顔を覆う。
『若。こっち向いて』
「……」
『若〜。聞いてるの?』
「……」
だんまりを決め込む紅丸。
困った顔で、わざとらしく肩を竦めて見せた葵。
『紅』
「……っ」
つい反応してしまう。
葵の方を向けば、デコピンを食らう。
「いってなぁ…。何すんだ、葵」
『呼んだのにこっちを向かないからよ。
第8の事は、若の好きにすればいい。私は若の決めた事には従う。
でも…、一時の感情で決めないで。相手も同じ人間よ。
守りたいものもあれが、譲れないものもある。
だから、その目で確かめて。協力に足るのか足らないのかを』
顔にかかる、余計な黒を払う白い手。
凪いだ青に見据えられる、赤。
暖簾の隙間から鳶の声が聞こえる。
『それで若が駄目だって判断したら、私がどうにかするから』
浅葱の目がゆっくり紅丸から外れ、離れていく。
そして、先に土間におりる小さな背中を追った。
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たんぱく質(プロフ) - なーちゃんさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけるだけで、励みになります。できるだけ早くお届けできるよう頑張っていきます。 (2020年6月3日 21時) (
レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
なーちゃん - 紅丸大隊長、大好きなんです！書いてくれてありがとうございます！続き待ってます！ (2020年6月2日 8時) (レス) id: 7840b2b58c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たんぱく質 | 作成日時：2020年5月24日 19時
