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茶菓子に手を伸ばしながら、報告書に目を通す葵。
心地の良い風が肌を撫で、高くなる空が夏を知らせる。


「「葵」」

『どうしたの?』

「死にぞこないのババァにお菓子もらった‼」

『コラ。口が悪いぞ』


2人の頬を突き、汚い言葉を注意する。
浅草では、皇国のお菓子は珍しい。
嬉しそうにする2人の手の中の菓子に視線を落とす。


これって…


『ねぇ、2人とも』

「なんだ」

『もっとお菓子増やしたくない?』

「「増やしたい‼」」

「でも、そんなことできるのか」

『できるよ』

「本当か⁉」

『じゃぁ、見てて』


葵はビスケットを1枚受けとり、間割らないように、優しく自分のポケットに入れる。


そして


「ポケットを叩くとビスケットが2つ」


と、歌う。


ポケットの中から2つのビスケットが出てくる。


「「おお‼」」

「もう1回叩くと⁉」

『4つになりまーす』


もう1度叩いて、またビスケットを出す。


「「スゲー!!」」

「どうやったんだ⁉」

「ヒナ達にも教えろ‼」

『企業秘密なので、お教えできません』

「「えぇー!!」」

『それに、ヒナ達にはポケット付いてないでしょ?』

「なら、ポケットがあればいいんだな?」

『いや、そういう訳じゃ…」

「行くぞ、ヒナ‼」

「おう‼」

『あっ、ちょと…‼』


颯の如く居間から飛び出す、2人
2人を止めるべ伸ばした手は、虚しく空を切る。
葵は、一抹の不安を感じる。
2人が走り去った廊下に恐る恐る上半身だけ乗り出して、こそっと覗く。
そこには、たまたま居合わせた若のポケットに群がるヒカヒナ。


「おい、なんだ」

「若、ポケット貸してくれ」

「はぁ?」

「葵が、こうすればお菓子が増えるって」


紅丸の防火ズボンのポケットに手を突っ込んで、バシバシと叩き、2人は両のポケットを覗いた。
が、そこには無残にも粉々になったビスケット。


「若のポケット、死んやがる」

「若のポケット、クソすぎる」

「俺のポケットに何か恨みでもあるのか」


がっくりと項垂れるヒカヒナ。



タネをあかすと、たまたま葵も同じお菓子を貰っていたのだ。
軍に居たころ教えてもらった童謡を思い出し、真似ただけなのだ。


まさかあそこまで純粋だったとは…


自分の浅はかな行為を悔いつつ、今のうちに逃げようとする。
しかし、ばっちり3人と目が合う。


あっ、ヤバい…


その日、火事でもないの頻繁に爆炎が上がったらしい。

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たんぱく質(プロフ) - なーちゃんさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるだけで、励みになります。できるだけ早くお届けできるよう頑張っていきます。 (2020年6月3日 21時) (レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
なーちゃん - 紅丸大隊長、大好きなんです!書いてくれてありがとうございます!続き待ってます! (2020年6月2日 8時) (レス) id: 7840b2b58c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たんぱく質 | 作成日時:2020年5月24日 19時

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