第55話 ページ10
『.....ん?』
山道を歩き続け、何やら小さな岩の塀が見えた
その入り口には執事服を身に纏った長身の男性。
「A様ですね
お待ちしておりました」
『...あなたは?』
「紹介が遅れました
私はゾルディック家にお仕えしております、執事のゴトーと申します」
メガネに短髪、鋭い目つき
おおよそ堅気には見えないが、執事らしく言葉遣いは丁寧だ。
『私を待ってた、と言いましたよね?
私たちは他所者、しかもあなた方の大事なキルアを取り戻しにきたんですよ?』
「あなたを直々に客人として出迎えるように仰せつかったのです
さ、こちらにどうぞ
屋敷までご案内いたします」
『...ミケ、ここまでありがとう
もう行っていいよ』
ミケは一度Aに擦り寄り、森に戻っていった。
警戒心を解かず、ゴトーの後に続く。
『私を客人だなんていった人は誰ですか?
まさかキルアじゃありませんよね?』
「ゼノ様です」
『ゼノ、様?』
「キルア様のお祖父様にあたられる方になります」
『(キルアのおじいさん...)
そんな人がどうして?』
「申し訳ございません
私はそれ以上はお聞きしていませんので」
『そうですか』
そこから数十分ほど山道を登り、執事室らしい建物を過ぎある程度歩きやすい道に出た。
すると、突然ゴトーが足を止め、道の脇に立ち頭を下げた。
『え?』
驚いて立ち止まると、先ほどまでなかった気配が突然前方に現れた。
『!
...』
そこに立っていたのは一日一殺と書かれた服を着た銀髪の老人。
『あなたが、キルアのおじいさん...?』
「おお、その通りじゃ
久しいのう
ワシのことは覚えておるか?」
『え...?』
ゼノから久しい、という言葉が飛び出し、Aは思わず目を見開く。
なぜならAは彼とは初対面なのだから。
名前も顔も初めて知った相手に久しぶりなどと言われて驚かないものはいないだろう。
「その様子じゃ、覚えておらんようだのう
まあ無理もない
10年以上前の話じゃ
それに、人の姿初めてだしのう」
『!!
あなた、私の事知ってるの...?』
「それよりもまずは屋敷に向かうぞ
ゴトーご苦労じゃったな」
「はい」
「ほれ、行くぞー」
『...』
Aはただただ唖然としながらも、その曲がった背を追いかけるために一歩踏み出した。
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作者名:SHINKAI | 作成日時:2022年8月24日 22時