第54話 ページ9
『ゼブロさん
私は試しの門をクリアしました
ミケが襲ってくることもなく、屋敷に行くことができる』
「その通りです．．．」
「おい、Aまさか」
Aはゴンの目を見つめ、真っ直ぐに言葉を放つ。
『ゴン、私は先にキルアの所に行く』
「．．．」
『みんなを待ってることはできない』
「．．．ん．．．うん！行って！
俺たちもすぐにおいつくよ！
だからAは一足先にキルアのところに行っててよ！」
「ゴン、いいのか？」
「うん！
Aは試しの門を開けたんだから、いいに決まってるよ」
『ありがとう、ゴン』
「Aさん屋敷まではこの道を真っ直ぐに行ってください
お恥ずかしい話ですが、私はいまだに屋敷がどこにあるかはわかりません
なので自力で探していただくことになりますが．．．」
『大丈夫ですよ
途中まではミケに案内してもらいますから』
ｸﾞﾙﾙ．．．
「そうですか、わかりました」
「A、気をつけろよ」
「何かあればすぐに連絡してくるんだぞ」
『うん、分かってる
みんなも頑張って』
「おう！」
「．．．」
「ゴン」
「．．．っ」
3人に背を向けて、森の小道を進んで行こうとしたAの背を、ゴンは追いかけた
『！』
小さな衝撃を背中に感じて立ち止まったA
ゴンが後ろから右手だけでAに抱きついたのだ
わずかにゴンの方が背が低く、Aの首元に顔を埋める。
「A、ごめん
俺何もわかんなくて．．．自分のことばっかで
教えてくれて、伝えてくれてありがとう．．．っ」
『うん．．．私もきつい言い方だったよね
ごめんね、ゴン．．．』
お腹に回されたゴンの右手を優しく撫で、頭をゴンの方に傾ける
「ううん．．．
A、怪我しないでね」
『ゴンも、その腕で無茶しないでね』
「それは．．．」
煮え切らない返事にAは微笑み、一歩踏み出す。
自然と離れたゴンとの距離
「(ぁ．．．)」
思わず伸ばしたゴンの手が空を切った。
『それじゃあ
一足先に行ってきます！』
後ろを振り返り、敬礼のポーズでAは笑う。
そしてその後は一度も振り返らずに、ミケと共に森の中を進んで行った。
「．．．」
「ゴン、大丈夫だ
Aにはまた会える」
「そーそー！そんなしょぼくれるなっての！」
「．．．うん！！」
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作者名：SHINKAI | 作成日時：2022年8月24日 22時
