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桃「ごめん。…ちょっと、ナーバスになってた」
…それだけじゃない、と直感で思った。
だけど私にはこれ以上踏み込む権利もなくて
「…京本くんは、どこなの？第一志望」
結局私は、当たり障りのない話題を振る
大人たちが天気の話をするのと変わらないような
そんな 受験生にとって、ありふれた話題。
桃「W大の、…政治経済学部」
私たちのクラスは私立文系志望を集めているから
ある程度の予測はできていたけれど
…私立文系の、最難関
彼の実力なら さほど高い目標でもないんだろう
「…がんばってね」
桃「Aさんは？」
「私はJ大の国際教養だけど…でも全然だめ」
桃「…がんばろうね、お互い」
ふわり、と音がしそうなほど柔らかく
京本くんが私に笑顔を向けた。
…この笑顔、知ってる。
誰かと距離を置くときに彼が見せる
貼り付けたような笑顔。
溢れんばかりの愛嬌に、わざとらしさはない。
だけどあまりにも自然すぎて、不自然なのだ。
いま彼の手によって器用に引かれようとしている
その一線を、…引かせるもんかと思った。
知りたい。
…そう思ってしまっていた。
「…ほんとは」
私なんかが踏み込むべきじゃない
分かっているのに滑り落ちてゆく、言葉
「なんで泣いてたの」
私のその言葉に京本くんは
あからさまに、瞳を揺らした。
案外不器用な人だなと思う。
風が吹いて、カーテンを巻き上げて
金木犀の香りが教室を包み込む
桃「…笑わない？」
どうして彼がこの時、口を開いたのか
今でも分からない
だって私は京本くんにとって
紛れもない「少女B」だったから。
「…笑わないよ」
鞄の口を締めて肩に掛け直し
誰かの机の上に座ったその人は
俯いたまま
わざとらしく自分の指を弄っていて
桃「…寂しいなって、」
そう呟いて、顔を上げる。
桃「…思ってた」
困ったような、苦しそうなその表情に
なんでかこっちまで、泣きたくなった。
真っ黒いはずの毛先が夕陽を捉えて
焦げ茶色に透けていた。
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はる(プロフ) - なさん» な様、わざわざコメントくださりありがとうございます！楽しんでいただけて嬉しいです(^^)Xの方は迷惑行為対策としての一時的な対応になりますので、お気になさらないでください。もう少しだけお待ちいただければと思います！ (1月20日 7時) (
レス) id: 360781c527 (このIDを非表示/違反報告)
な(プロフ) - ど深夜も過ぎた明け方に見つけて、泣きながら読みました…。物語の繊細な空気感は、はるさんの言葉選びが素敵だからですね。泣きながら飛んだX、フォロー押した後にbio欄気付きまして…、通知増やしましたかね、申し訳ないです。。素敵なお話に出会えて幸せです。 (1月20日 5時) (レス) @page50 id: a662f9fc26 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - あみさん» あみさん、わざわざコメントありがとうございます！不器用さんたちばっかりのストーリー、気に入ってもらえて嬉しいです(^^) (2021年11月8日 23時) (レス) id: 4e8f9bb287 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - キラキラした恋に憧れがちですが、実際は上手くいかないし、ズルくなったり誰かを傷つけてしまったりもしますよね。不器用で人間らしい恋愛模様に惹かれました。ピンクさんの美しさに戸惑いたいし、赤さんの際限ない愛が羨ましい…とっても面白かったです！すきです！ (2021年11月8日 17時) (レス) @page49 id: 1bfc2c8595 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - きらさん» きらさん、わざわざコメントありがとうございます！お付き合いいただきありがとうございました！ (2021年11月7日 10時) (レス) id: 4e8f9bb287 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はる
| 作成日時：2021年9月25日 11時
