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及川side
夏咲Aという女の子は、俺と岩ちゃんの幼なじみだ。
小中高と学校が一緒だったし、何かと縁もあって必然的に話す回数が増えた。
彼女は昔から綺麗で、自信満々。人を虜にさせるような魅力があって、実際に惚れている奴は大量にいたと思う。
でもAちゃんは俺の見ていた限りだと、誰かを特別扱いすることはなかった。
俺や岩ちゃんでさえ、あくまで"そこそこ遊ぶ友達"という括り。
それでも彼女の中では特別扱いだったんだろうと今では思うが、当時から壁は感じていた。
そのスタンスがガラリと変わったのは、中3の夏、合宿限定のマネージャーを頼み込んでしてもらった時のこと。
そう、飛雄に出会ってからAちゃんは変わった。
何かに執着することなど絶対になかったくせに、飛雄ちゃんにだけはその複雑な内面を堂々と見せる。
及川「…ちょっと、嫉妬しちゃうな。」
岩泉「何の話だボケ。」
及川「Aちゃんだよ。俺らには絶対壁を壊さないのに、飛雄ちゃんにはずっと素で話してるの。」
岩泉「…あいつは、そういう奴だろ。それに」
"何も隠してないわけじゃねぇよ、あれは"
そう言って不機嫌そうにグラスにあるワインを飲み干す。
岩ちゃんが言ったように、Aちゃんが飛雄に対して隠していることはたくさんある。
…飛雄を嫌いだと言い続ける理由や
試合に負けろと言いながら、おめでとうって言う理由とか
目立つのがそこまで好きじゃなかった彼女が、女優になったわけや
自分に興味を持たせたいと言いながら、高校卒業すると同時に飛雄の前から姿を消した理由
…そして、なんで今戻って来たのか
及川「…ほんと、難儀だねぇ。」
岩泉「…アイツは昔からめんどくせぇ奴だろうが。」
それらは全て、飛雄のためで
その全てに、俺は妬いているわけで
…ほんとに、不器用な女の子だよ。
意地悪に笑って飛雄ちゃんに酒を飲ませようとしているAちゃんを見ながら、2人でため息をついた。
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猫人形 元猫耳アヤツリ人形 (°∀° )(プロフ) - 何故こんなにも評価されていないのか不思議なくらい良い作品でした! (2022年1月26日 23時) (レス) @page48 id: d8d7cfe01e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:久賀 | 作成日時:2021年11月25日 16時