4・agreement ページ21
思考が働かない。脳がこれ以上考えることを拒否していた。
白と黒が視界に混在し、それを脳が処理をしていない。
わかることは、今は私が鬱と契約を交わした後のことで。
私が砂浜にいて、美型な者が此方を見つめていたことがわかった。
あ、口が動いた。
「痛くないか？…ならいい」
その言葉に肯定すれば、者は顔を背けた。
その者は、海の縁で座っている。
砂浜に顔を向けていて、私からは者の表情を見ることはできなかった。
暗闇であるにも関わらず、揺らめく金髪と人らしからぬ巨大な鉤爪は鷹のような鳶のようなものに見えた。
者のもとから砂浜にルビーがボトンボトンと落ち、山を作っていく。
それは、とても明るい光を放っていた。
海のさざ波は、その者の声のBGMであるように遣えているかのように、静かだった。
「契約後、生者はここに来て心を清めるという噂があった。
改心することがないようにと、主人側にもそれを自覚させ、責任をもたせることが必要だった。
だが、もはや契りを交わす者もいない。何故か？
生者にとって有益なことがない。そもそも感心がない。無知である。この三つだ。」
コツコツとルビー同士が打ち合っている音がする。
夜空に流れ星が三つ流れ、去った。
「この務めも特に必要性は薄い。
俺の存在価値でもあったが、主人であるお前が来たんだ。それも見納めだ。
ただ、お前が此処に居ろと命じるなら従う。
俺達にとっては、従うことが最大の敬意となり、愛情表現だからな。」
碧い瞳が寄ってくる。その者の瞳が二つの色が交差しているのが見えた。
感情でかわるの、、？距離感がつかめない…
私が顔を顰めると、者は私の側でしゃがんだ。
「お前、、彼奴と契約を結んだだろ。しかも強固なものをだ。
碌に疑問も説明もきかずにやった…はぁ、容易く信用すると命取りとなるぞ。」
ベシリとデコピンをされたような音と痛みが伴う。
力加減が下手なのか、結構痛い。
目を閉じて、開いて。
その者を見れば、紅い瞳が眼鏡越しに寄越された。
片目を覆うような長い金髪は私の頬に当たってるのかこしょばしい。
「自分の左手の小指を見てみろ、彼奴の印が嫌嫌と刻まれている。」
グイッと視界に無理矢理自身の小指を入れられる。
やはり力が強い、捻ったような痛みが走った。
見れば黒に蒼が混じったようなジェットが使われた指輪が綺麗に嵌められていた。
おぉ、本当だあと感心しつつ、鬱センスいいなぁとやはり他人事になる。
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