[wrwrd]異様なオミセ (ページ11)

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・ⅲ ページ11

カジノのようなその店は、内装が大変綺羅びやかなものだった。
黒い木材がもとにされ、所々均等につけられている金がゴージャスさを増させている。
天井は高く二階から覗ける構造、鮮明で美しいシャンデリアは目が奪われる。
高級感溢れる壁画や壺、赤いマットは大人のお店を朦朧とさせた。
それにしては、店員という店員を見つけることはできず、全てが自動で行われ、全てが操られているかのようなスムーズな動きを見せた。

客は私達に気づいていないかのように夢中で手を動かしている。
気づかれないことにホッとはしたものの、その行動が悍ましく思えた。

客が入れないような重そうな扉をシャオロンは尻尾で簡単に開け、スルリと入っていく。
厳重にされているであろう鍵は、彼が近づくと解き放たれたように解放した。

私がそこで立ち止まれば、彼は不思議そうに私を見る。

『どうしましたか？』

「い、いや私が入っていいのかなって…」

彼は何処かコネシマ風なものを漂わせていたので、敬語を外している。
それに関して彼は特に追求してこなかったし、嬉しそうに耳を動かしていたしいいと思ってこのままでいる。

言い訳のような言葉を述べたのも、本能的なものが私の足を止めたせいだった。
気持ちが受け付けない。そんな感じの。

そんな哀れな私を見て、彼はニャオと小さく鳴いた。

『主様。アルジサマ。
総ては主様を受け止め、そして受け止めて欲しいと願っております。』

彼の黄金色の瞳から一つ、また一つと涙が溢れ出してきた。

思わず目を疑った。
猫が(猫の形であるものが)涙を流すこと自体に驚いたし、あまりに静かに流すものだから何かの寸劇かと思った。

神声的なそれは止まらない程に、愚痴を願いを私にぶつけるように続けた。

『主様…主様が俺を捨てた時、、その時からは何も進まないで欲しい。
始まりから初めて、最初を見届けるのが俺の役目。だ、だけどそれは俺がおらんとアカンくなって欲
しい。はい、はぃ、不躾なことを言うてるのは自覚しています。
でもでも、、、そしたら主様は俺を捨てへんやろ、？』

私に何かを強請っているその姿は、まさに捨て猫。
その巨体が縮んで見えるほどに小さく幼いものに見え始めた。
一体何を望んでいるのか。

ただ捨てられたくないという気持ちを暖めてあげたい。
そんな良心がでた私は、彼を下から持ち上げるようにして抱きしめた。

彼の涙はどうやら本物だったらしい。
私の肩に驚くほど冷たい水が滴った。