・�� ページ2
モップを両手で持ち、顔には愛想笑いをペッタリと貼る。
残念ながら闇に包まれたこのパチンコ屋で、まともな客は中々いない。
一度目の客は困惑し、常連は嫌悪し、裏社会は、、、私になんか話しかけないだろう。
故障しましたなどの報告は一般人からもあるが、こんにちはから始まる台詞にいい思い出はない。
いやいい思い出なんかじゃなくて、こんにちはで話しかけられたことないかもしれない。
面倒くさいことになりそうだと。
早く終わらないだろうかという店員にはあってはいけない思考を巡らせる。
すると、男は目を細め、私の全身をくまなく見つめた。
それは私を見ているというより、私の周りにある何かを…
気味が悪くなり、私からまた声をかける。
歯切りが悪い男は、顎に手をあてヘラヘラと笑いだした。
「、、いや〜、おねーさん随分ヤバいもん抱えてんな思うてん。」
「や、やばいもの、、ですか…」
「そそ。ヤ、バ、い、もん」
口を大きく動かし、そう言って見せる男は私を幼児のように扱っているのだろう。
それにしては未知の領域なような、大人の色気のようなものも感じる。
いや、しかし私にそれで理解できると思っているのか。
残念ながら私は神などは信じないし、宗教的なお誘いなら断固拒否。
意味を理解できずに沈黙がはしる。
見た目に反してかなりの年配な方なのだろうか。
それならば、偶然を装って避けるのもありだろう。
訝しんでいるように、警戒して数歩離れると、また男は話をきりだした。
「おねーさん、賭け、せーへん？」
「…お客様が御満足頂けるような者ではございません。」
「おねーさんがええねんけど」
いつもの調子を戻し、サッと離れようかと思えば、また腕を掴まれた。
男から見て、私は相当焦っているのだろうか。
男は口説くように言葉を重ねる。
ナンパなどこの顔面でされたことはないのだが、心地よいものではないことは分かった。
面倒くさいというのと、厄介なものに絡まれたと多少の恐怖を感じる。
モップという謎の安心感を得つつ、どう返答しようかと考える。
もう上司に擦り付けようかな。
「他のものを連れてきましょうか？」
「おねーさん、条件聴いてみいや」
「条件、、」
私が小さく復唱すると、男は楽しそうに口角を上げた。
耳を劈くはずの宣伝の音が静かになり、男の言葉を遮らないようにと跪いたようにも感じる。
「僕が、一回で入れたらおねーさんのこと借りてもええ？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 109人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
