恋と笑いは紙一重２【芸人短編集】

しあわせな 【祇園 櫻井】 ページ36

卯月さんのリクエストです。




・


『ただいまー…｡』


櫻井｢おっ、返ってきた。おかえり。｣


『お待たせー。すぐご飯作るから。』





Aはテーブルの上に、スーパーで買って来た材料の入ったビニール袋を置いた。ジャガイモに、ニンジンに、玉ねぎ。カレーライスだろうか。


せかせかと準備をするAの後ろ姿を眺める。俺よりも少し帰りが遅いAは、いつも忙しそうに動いているように見える。家事なども手伝うから、と声をかけても『大丈夫！』の一点張りで、俺にはあまり頼らない。




櫻｢なぁ、手伝うからAは休んどったらええよ？｣


『いいの、健くんはゆっくりしてて。』


櫻｢いつもA忙しそうにしてるやん。俺が代わったるから…｣


『私にとって健くんに尽くすのが幸せなんだから。私がやりたいの。』





そう言ったAに、目を丸くさせる俺。俺に尽くすんが、Aの幸せ？




櫻｢それ、ホンマなん？｣


『うん。忙しくても、無理しても。それが健くんの為になるなら、どんな事でも幸せなの。』





タンタンと、リズムを崩さずに野菜を切っていくAの横顔が、何となく。笑って見えた。



俺って、
こんなにも愛されてたんや。




彼女の思いに、俺は呆気なく身を引いてしまう。でも、俺にもその幸せを分けて欲しくて。





櫻｢じゃあ、俺食器出してくわ。やる事は、半分こな。｣


『ありがとう。』





俺にとっての幸せも、君でありたいから。忙しさも、幸せも、半分こ。





これで、文句なしやろ？


俺はAの頭を撫でて、そのまま食器棚へと向かった。

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