恋と笑いは紙一重５【芸人短編集】

待チ人行ク人 【コマンダンテ 石井】 ページ37

たろろさんのリクエストです。









・


俺は待った。


どれだけの月日か、
俺は長い間お前の帰りを待っていた。






石井｢なぁ、そろそろ大阪帰って来てくれへんか…。Aがおらんと寂しい……。｣


《まだダメだよ。コマンダンテがＭ−1に出れたらって約束してきたの、石井くんの方でしょ？》


石｢せやけど…。｣


《だから、もう少し頑張って。青森から応援してる。》





ガチャリと電話が切れる音がして、電子音がスマホの奥から鳴り響いてきた。俺はそのまま倒れ込むように楽屋のパイプ椅子に座り込む。




Ｍ−1グランプリ出場。

俺には到底高くて登りきれないような壁やった。そもそも、今はその壁のどこら辺の高さにしがみついているのか分からへんし。


今にも滑り落ちてしまいそうだ。







それでも、約束は約束。


必ずＭ−1のステージに立って、
マイク一本でお客さんら笑わせて。



必ずAを迎えに行くからな。





待ってるだけじゃアカンって気付いた。
俺から迎えに行ったらんと。







石井｢待っててな。絶対迎えに行くから。｣





待ち受けのAの顔を、優しく撫でる。
｢待ってる｣そう聞こえた気がした。





安田｢おい、そろそろ一次予選出番やで。｣


石｢おう。｣






重い腰をあげて、ネクタイを締め直す。




今年こそ、必ず迎えに行く。

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