恋と笑いは紙一重５【芸人短編集】

嫉妬に恋 【トット 多田】 ページ22

たろろさんのリクエストです。








・


『智佑、ご飯出来たよ。食べよ。』


多田「ん？おぉ。」





智佑は読んでいた雑誌を机に置いて、席に着いた。久しぶりの２人でのご飯だからか、会話が弾む。何となくテレビに目をやると、バラエティ番組がやっていた。




『あっ、和牛。』


多「またテレビ出てはるのか。最近人気やなぁ。」


『M-1でも良い成績残してるし、それなりにテレビ業界の人達にも期待されてるのかもね。』


多「せやなぁ。」





画面の中では、和牛のお二人が大物芸人のビートたけしさんに弄られている。そのままテレビを見ながらご飯を食べていると、智佑が私の顔を両手で挟んで、グッと向きを前にした。






『……なにひゅるのよ。』


多「飯食うてる時にテレビに夢中になるんは行儀悪い。」


『……とぅいまてん。』


多「分かればよろしい。」





そう言うと、智佑と私は食事に戻る。私はサラダにドレッシングをかけようと思い、周りを見渡すと智佑の目の前にあった。




『ドレッシング取って。』


多「自分で取ればええやろ…。」


『いいじゃん智佑の前にあるんだから。』


多「分かったて、取ればええんやろ。」





智佑は手に取ったドレッシングを、私に押し付けるように渡した。明らかに智佑の機嫌が悪い。私に対して、いきなり冷たくあしらうようになった。




『……私なんか怒らせることした？』


多「べつに。」


『正直に言ってよ。謝るから。』


多「………俺かて毎日Aのために芸人頑張ってんのに。A、和牛さんのことばっか褒めてる。」






予想外の理由に面食らって黙りこくってしまう私。しばらく私と智佑の間に異様な雰囲気が流れて、私は耐えきれなくなる。





『…………ﾌﾟｯ。』


多「は？」


『嫉妬したの？智佑が？私に？ﾌﾟｯ…、ﾌﾌﾌﾌｯ。ｸｸｯ……。』


多「いや、何で笑うねん。」


『笑うしかないでしょー。』





“あー、面白い”と、笑い泣きして目をこする私を、智佑は不機嫌そうに頬を膨らませて見ていた。




大切な人に嫉妬された時って、
こんな気持ちなんだ。




面白くて、楽しくて。
愛されてるって実感できる。





なんか自分、嫉妬が好きになりそうだ。

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