106:俺のもの ページ6
ようやく、ジャケットから抜け出すことができたときには、そこに慎太郎さんの姿はなかった。
そのかわり、目の前には不満そうな顔した松村さんの姿。
目が合ったかと思えば、松村さんはわざとらしく口を尖らせて「Aさんのばーか」って小学生みたいな悪口を放つ。
急にばーかとか言われても思い当たる節はない。
横目で松村さんを見れば、呆れたように盛大なため息をひとつ吐かれた。
「Aさん、そういう顔、俺以外に見せちゃダメです」
「…そういう顔とは？」
「うそ…それ無自覚なの、」
だとしたらタチ悪すぎ、なんて自分の髪をぐしゃぐしゃにする松村さん。
「もう、Aさんは俺だけのものですからね？」
縋るように向けられた視線はまるで子犬みたい。
「ね？」なんて追い討ちを掛けるように首を傾げられたら、頷くしかない。
こくん、と頷く私を見て松村さんは満足そうに微笑むとビールに口をつけた。
#
「ばいばーいお幸せにー！」
店の外。
ボリューム調整機能壊れた？ってくらい大きな慎太郎さんの声が通りに響く。
何事かと集まる視線に松村さんと2人苦笑いを浮かべる。
「あいつ、うるさすぎ」
「慎太郎さんって昔からあんな感じです？」
「はじめて会った時のあいつもめっちゃうるさくて最悪でしたよ」
「あはは、なんか想像出来る」
慎太郎さんの声を背中に受けながら2人で歩き出す。
松村さんは「ほんとあいつとの腐れ縁は腐り過ぎてて嫌になる」なんて言うけれど、なんだかんだといい関係なんじゃないかなぁと思う。
まだ出会って間もない私でさえ慎太郎さんの存在に救われることがあるのだから、きっと松村さんだってそういうことがたくさんあったのではないかな、なんて。
そんなことを考えながら歩いていたら、ほんの小さな段差に躓いて体勢を崩しそうになった。
「大丈夫？！」
「だ、大丈夫で、す」
「え、ほんとに大丈夫です？！」
「大丈夫です、ほんとに。ぼーっとしてただけで」
「ならいいけど」
松村さんの顔が離れていく。と思ったら、「あ」ってまたこちらに視線が向く。
「あの…手、繋いでもいいですか？」
また躓いたら困るから、ってそう言って松村さんは私の手を取る。
「1人の体じゃないんですからね？」
「なんかそれ、語弊がありません？」
繋いだ手にぎゅっと力が込められる。
ドキン、と波打つ心臓がうるさくて困る。誤魔化すように松村さんのほうを見れば、目が合った。
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さーや(プロフ) - Hano.さん» お返事遅くなってしまいました、すみません…本編最後までお付き合いいただきありがとうございました！！番外編も少しずつですが更新していくので楽しんでいただけると嬉しいです〜！ (2021年11月2日 21時) (
レス) @page16 id: 4b2ff4c864 (このIDを非表示/違反報告)
Hano.(プロフ) - 何度もコメントごめんなさいですが、完結おめでとうございます！！いつも更新を楽しみにしてました！きょもほくの取り合い？みたいな所が個人的にお気に入りです^ - ^番外編も楽しみにしてますね！ (2021年10月25日 23時) (レス) @page13 id: c16f775043 (このIDを非表示/違反報告)
もえぎ(プロフ) - Hano.さん» はじめまして、コメントありがとうございます！お話楽しんでいただけているようで嬉しいです〜更新ゆっくりではありますが、読んでいただけると嬉しいです！ (2021年10月20日 21時) (レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
Hano.(プロフ) - はじめまして！いつももえぎさんの作品に癒されています！すとおたの友達いないのめっちゃわかります！！これからも更新楽しみにしてますね！！ (2021年10月20日 7時) (レス) @page2 id: 274f9384a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もえぎ | 作成日時：2021年10月19日 17時
