74:宇宙人 ページ24
行くぞ、とか言っておいて、京本は後ろを確認することもなくズンズンと駅までの道を突き進んでいく。
いや、ほんとなんなのとか思いつつも、その背中を追いかけてる私も私なのだけど。
「んじゃ、今日はおつかれ」
真っ直ぐ突き進んで歩くから、あっという間に駅に着いてしまった。
京本がやっとこちらを振り向いた、と思ったら爽やかにしかもやけにスッキリした顔で手をあげて改札に入って行こうとするもんだから、慌てて腕を掴む。
「いやいや、ちょっと待って」
「え、なに」
「『え、なに』じゃないんだけど？！」
「何それ俺のモノマネ？」
だとしたら全然似てねぇんだけど、って京本は不満気な顔をするけど問題はそこじゃないのよ。
「なんか不満でもあんの？」
「不満だらけだわ」
突然、宣戦布告！とか言ってもう我慢しないだの、真っ向勝負するだの言って、完全にこちらを置いてきぼりにしたまま、1人だけスッキリした顔して、「はいじゃあおつかれ！解散！」って不満以外のなにものでもないんですけど？！
「あー、わかった。アレでしょ。今日は、家に送るとか言わないの？ってことでしょ」
それなら納得、みたいな顔して頷く京本にため息しか漏れない。
なんかもう宇宙人過ぎて何話しても無駄な気がしてきた。
「いや、もういい。おつかれ、京本」
はぁ、と大きなため息をひとつついて、今度は私が改札に向かう。
「いや、意味わかんねぇけど？！」
なんて今度は京本が大声あげるけど、その声に振り向いてなんかやんない。
それくらいしたって許されるでしょ。
ホームに滑り込んできた電車に乗り込もうとしたら、またしても後ろから手を引かれる。
なんなの？！って慌てて振り返れば、そこにはまたしても京本がいた。
「…勝手に1人で行くなよ、バカ」
「は？」
「こんな時間に女1人で帰らせるわけねぇだろ」
ほら、って手を引かれ、そのまま電車に2人で乗り込む。
乗りこむとすぐにドアは閉まり、ゆっくりと電車は走り出す。
互いに黙りこくったまま。
どこに視線を向けたらいいか分からず、京本の肩越しに街の光が流れるのをただただ眺めることしか出来なかった。
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作者名：もえぎ | 作成日時：2021年9月25日 13時
