90-紫蘭(2) ページ41
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凪誠士郎視点
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ほんの気まぐれのはずだった。
気が向いた時にだけAに数学を教えてみれば、「なるほど！」「そういうことかあ」等と嬉しそうな笑顔が見れたから。
その笑顔を見るのは、昼寝をしている時やゲームをしている時と同じくらい心地が良かったものだから。
少しずつ、Aと言葉を交わす機会が増えていった。数学を教えるだけだったのが、俺の好きなゲームの話をしたり、Aが最近ハマっているドラマの話をしたり。
そしてテストで良い点が取れれば「凪くん本当にありがとうね！」と御礼に購買のパンを奢ってもらった。
人間関係なんて面倒くさい。
友達なんていらない。
彼女なんて以ての外。
ずっと、そう思ってきたのに。
「凪くん、おはよう！今日はいつもより早いね」
「……はよ。ちょっと早く目ぇ覚めたから」
Aからのおはようで始まる学校は、以前よりも退屈でなくなっていた。
＊
＊
＊
そんなささやかな幸せが終わるのは突然だった。
席替えをすることになり、再びAの隣の席になる奇跡なんて起こるわけもなく。Aと席が離れてしまえば、言葉を交わす場面はほぼ消滅した。
所詮、席が近いから話していただけだったんだ、俺達は。わざわざ用もないのに話しかけに行くような仲じゃない。
俺のいないところでも、Aは心の底から笑える。
(……やっぱ学校、めんどくさい)
寝て隠密パンしてゲームしての退屈な学校生活に戻った。
そんな中、訪れたバレンタインデー。学校中がやけに甘い匂い包まれているし、寝不足気味な女子が多いし、男子はなんだかソワソワしている。ま、俺には関係ないけど。
世間一般的には特別な日も、俺にとっては他と変わらない普通の日。いつもと変わらず、寝たりゲームしたりして過ごしていた。
確か、3限が終わったくらいの休み時間だった。
授業が終わってもずっと寝たままでいれば、「凪くん」と肩を叩かれた。久し振りに話し掛けてくれたその声に胸がとくんと跳ねる。
顔を上げれば、タッパーを目の前に差し出されて。
「寝てるとこごめんね、クラスの皆にバレンタインのお菓子作ってきたからよかったら食べて！手作り平気？」
「……へーき」
「よかったあ」
タッパーの中にあるマドレーヌを1つ掴む。
ゆっくりと口に含んで咀嚼する。
美味しい？と尋ねられて頷けば、
ふわりと微笑む姿の破壊力に息が止まるかと思った。
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はむスター(プロフ) - 夜夏さん» 凛くんの強者感が滲み出てますね😂 (2023年2月9日 17時) (
レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
夜夏 - 凛ちゃんの『勝った』が、めっっっちゃ好きです…！ (2023年2月8日 22時) (レス) @page46 id: 8f15f4a9c1 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - みはさん» ありがとうございます！夢主と同じ気持ちでお読みいただければと思います💪 (2023年2月7日 10時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
みは - ここからどうなるのかドキドキです😭🫶🏻 (2023年2月6日 21時) (レス) id: 48943adb31 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - 咲菜さん» 守るためとはいえ嘘をついて自ら離れていく選択は辛いものがありますね😢長い間お読みくださってるんですね、ありがとうございます！☺️これからもワクワクしながら読んでいただけるよう頑張ります！💪 (2023年2月6日 16時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はむスター
| 作成日時：2023年1月20日 17時
