16.クズが落ちた日 ページ17
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一応その後も手作り大作戦を続けてみたが、嫌な顔をされることはなかった。
かと言って嬉しそうな顔や感情を見せるわけでもないが、毎回残さずに全部食べてくれた。
「いつもお弁当とか作ってくれるから、御礼にやる」
そしていつもの御礼だとブランドの化粧品のロゴが入っている紙袋を「ん」とそっぽ向きながら差し出される。照れている横顔に「でも……」と躊躇した発言をすれば、「いーから」と強引に手に持たされた。
五条くんは多分、私が「こんな高価なもの受け取れない」と躊躇していると思ったのだろう。それは不正解だ。実際は「嫌がらせしてるのに御礼くれるなんて……」と流石に罪悪感が湧いているのだ。
御礼を受け取る資格なんて、ない。
「やっぱり受け取れないよ」
「んじゃ、貸して。捨てるから」
「それはダメ!!五条くんが折角買ったものなのに」
「んじゃ、黙って貰っておけよ。何を遠慮してるわけ?」
「…」
それでも気が晴れず、紙袋を手に持ったまま俯いていると「あのさ、んな顔させたかったわけじゃねーんだけど」と溜息混じりに切り出される。
「……喜んでくれねーの?」
拗ねたような顔をしてそう言われて、まるで大きな子供を相手にしているみたいに思えて母性をくすぐられる。慌てて「嬉しい!ちゃんと嬉しいよ、ありがとう」とフォロー入れれば、彼はホッとしたように頬を緩ませた。
「いつもお弁当とか作ってくれるのって、こういう見返りを求めてるからだと思ってた。実際、今までの女はそうだったし」
「…」
「Aは違うんだな」
ポツリと静かに語られた、彼の少しの本音。モテるクズはモテるクズなりに悩みがあったのだろう。
「私は、御礼なんていらないかな。私がやりたくてやってることだし。でも、迷惑ならやめるよ」
「迷惑じゃない。むしろ、今後も作って欲しいっつーか……」
成る程、五条くんは何気にお弁当を気に入ってくれていたわけか。……なら、作る頻度減らすか。その方が愛想尽かされやすそうだ。心の中で悪魔のような作戦を立てる。
今後も作って欲しい、と言った五条くんのお願いには返事せずにニコニコしてみれば、いきなり抱き締められて彼の匂いに包まれた。
「ご、五条くん……?」
「ん、……なんかこう、ぐわぁってきて」
「ぐわぁって?」
「うん、ぐわぁって」
後の五条悟は語る。あの笑顔に落ちない男がこの世に存在するのかと。
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ちゃむ - コメント失礼します!この作品を見た後不誠実な五条さんが好きな私と誠実な五条さん好きの私が喧嘩してました!wこれ五条さん目線のこの物語が見てみたいです!もし良ければ書いて頂けませんか?! (2月7日 22時) (レス) @page39 id: b02cacdca3 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - 雪菜さん» 最後までお読みくださりありがとうございました!!😭きっと五条は夢主に誠実さを見せつける為に行動を改めていくんだと思います、!最後には手に入れる気満々ですからね笑 こちらこそ更新不定期な今作をお読みくださってありがとうございました…! (1月1日 23時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - わー!!!完結おめでとうございます!!!この先の激重五条も見たいですが想像で楽しみます😌こんな神作を連載してくれてありがとうございました!!本当に見てて面白かったです😭🙏💞 (12月31日 22時) (レス) @page39 id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます!!! (8月11日 1時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - dearさん» 夢主を気に入っていただけてとても嬉しいです!☺️でも五条さんは自分と夢主で一緒に幸せになりたいと思ってるかもしれませんね、!笑 (8月11日 1時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はむスター | 作成日時:2022年3月26日 21時