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「本当にありがとうございました」
「イヤッ、ぜ、全然ですよ……！」
深々と頭を下げ、私はそそくさとその場から立ち去った。……否、立ち去ろうとした。
手首を掴まれて引き止められる。混血で、
「き、君さ。なんか普通の人とちゃうよなっ？」
「……授業、遅れますから………っ」
「おれ、人より鼻ええから分か──あっ！」
隙を伺って、思いっきり手を振りほどき、彼に背を向けて走り出す。後ろを確認する余裕なんて無かった。
＊
転校して分かった事がある。
思ったより皆んな、血を吸う行為にオープンだったのだ。昼休みの今ですら、誰かは必ず血を吸っている。指・腕からとか、驚くことに鎖骨からとか……。
補足だが、純血の生徒は白がメインの制服で、混血の生徒は黒がメインの制服を着ている。だから白い制服の女子生徒と、黒い制服の男子生徒がイチャイチャしているのをチラホラ見かける。
新しく出来た友人に「これが日常茶飯事だよ」と言われた時は、本当に正気を疑った。でも慣れてしまえば全く気にならない。慣れというものは怖いものだ。
「あ……ちょっと職員室行かなきゃ」
「待ってるから早く行ってきな〜」
「急いで行ってくるね」
そんな事を考えていたら、先生に呼び出された事をすっかり忘れてしまっていた。友人にそれを伝え、私なりの早歩きで長い廊下を進む。
見渡せば何処も彼処も密着してる男女ばかり。少し居た堪れないが思春期だから仕方ない。なるべく見ないようにして先を急いだ。
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作者名：かえち
| 作成日時：2023年3月1日 20時
