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さすがに５分もしたら居なくなってるよね、と考え、５分ほど経ってから準備室へと戻った。
しかしそこに置いていかれた教材はなく、少し前に目が合った彼が居るだけだった。"国語準備室"と書かれてある扉に寄りかかり、腕を組みながら立っている。戻ってきた私に気がつくと、何やら含みのある笑顔で近づいてくる。
「やっぱさっきの、キミやったよね」
「あ、あの、別に覗き見してたわけじゃなくて……」
「知っとる知っとる。なんか片付けに来たんやろ？ あれ重かったし俺がしまっといたから安心して」
爽やかスマイルを向けられて、流れるように私達は教室へ一緒に戻っていた。あまりのナチュラルさに、驚きで声が出ない。
「ちょっと歩きながら話そ？」
「えっ、あ、はい……？」
「あのな、なんで俺こんな可愛い子に気付かなかったん？ってくらいな、初めて話した時からずーーっと気になっちゃってたんよね〜〜実は♡」
すごい早口で、しかも高揚した声で話すから、聞き取ろうとしても耳から全部抜けていく。困惑の表情を浮かべてもそれに気付いてくれず、彼はさらにマシンガントークを始めた。
「アイツらにこういう子やゆうても全然分かってくれんねん。あ！でも最近、シャオちゃんは『大先生が言っとった子、今やっと分かったわ』って言ってきたなあ。ロボロはなんか……睨んできたな……」
「そうなんですか、、」
「そいえば名前言っとらんよね？大先生って呼ばれとるんやけど、鬱くんって呼んでや！ね、ハルキちゃんっ」
語尾にハートでもつきそうな勢いでそう言い、私の肩をいつの間にか抱いていた。これが本物の遊び人……全部自然で気づかないうちにされてるから恐ろしい。
鬱くんはある意味、要注意人物だなぁ。すごく近い距離感で隣を歩く彼を見て、ふとそう思った。
「ちょっと、近いです…」
「タメでええよ？」
「ち、ちかい」
「そお？ なんか小動物みたいで可愛ええね」
「ヒィ…………」
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作者名：かえち
| 作成日時：2023年3月1日 20時
