二兎追うものは一兎も得ず【 灰谷兄弟 】

二十三話(※一部性表現有りの為注意) ページ29

　
　
　
「 ッ"、ぁ………ッ！ 」




びくッ、と身体を震わせる




服の中に入り込む男性の手は腹部をまさぐり、徐々に上に這い上がってくる




よく見えない視界




それが一番恐怖を煽るものであった。




「 …ッ、Aお姉さんスゲェ可愛い…ッ 」




「 ん、ッほんとソレ… 」




全身が舐め回されてる様な感覚に、歯軋りを起こす




可愛いと何度も言われ続けられる




嬉しくない。全然嬉しくない……！！




反抗的な台詞を吐き出そうとするも喉に引っかかって口から吐き出せない




頬が尋常じゃないほど火照りだし、身体が反応を起こした時




「 ………ぁ"ッ、……………ッ、ひ！？ 」




触られたくない、"触っちゃダメな場所"にどちらかの手が触れられる




感じたことの無い感覚




先程の行為よりも強い恐怖心が生まれ、不自由であった腕が強く彼の手を弾いた。




「 ッ、……お姉さん？ 」




「 ……はぁ、ッ、………、ッこ、


　───── 来ないで、下さ……ッい！！ 」




ボヤける視界だがやや見える




近寄る1つの影に怒りをぶつけ、乱れた服を着込めば無理矢理腰を浮かせ、彼らから全速力で離れた。




だが無理矢理な為、玄関前で大胆に転けてしまう




「 …………ッぅ…… 」




遠くから2人程の足音が聞こえる




涙を流し私はボヤけた視界の中、2人に口を開いた




「 もうッ"来ないでよ……ッ！


　分かってるんだからッ！！……ッ警察に


　捕まった腹いせで女の私に恥をかかせようと、


　陥れようとしてんでしょ……ッ！？


　最っ低…！！君達はッ、最低な人間だよッ！！」


　





　

そう言い放った時、私は後悔などしなかった




だけど、立ち尽くす2人がどんな顔をしているのか、それだけは心残りとなった








逃げ出した夜の空気はとても冷たく苦しいもので




ハロウィンで盛り上がる街中は、今の私に似つかわしくない大盛況だった。

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