二兎追うものは一兎も得ず【 灰谷兄弟 】

十六話 ページ22

　
　
　
　




あれから約5年後





「 おはようございます！！ 」




「 Aおはよう 」




午前8時頃




私は制帽のズレを直し、椅子に座る先輩に朝の日課の挨拶をする




5年の月日が経ち、私は18歳から23歳に成長




幼さのあった顔付きは忽ちに大人へと変わり




今では何件もの事件を解決する凄腕警察官と評される程にまでなった




「 じゃあ、後は宜しくね 」




「 はい、先輩お疲れ様でした！ 」




私は満面の笑みを先輩に送る




その表情に安心感を得たのか、先輩は私に背を向け交番を後にした




静まり返る交番内




私は先輩が座っていた椅子に腰を下ろし、机に置かれた書類に目を通す




"7月頃、廃工場にて【 新宿 愛美愛主 】と縫われた服を着た集団を捕獲"




"残り数名は未だに逃走中"




「 …め、愛美、メビウス…？


　……やっぱり覚えづらいなぁ 」




まだ残り続ける若者の愚連隊




どんなに警察官が彼らを捕らえても消える事は無い




逆に、増えているような気がする。




以前、渋谷の武蔵神社で乱闘事件の応援に駆り出されたのだが、




【 東京卍會 】といった愚連隊がいたと他の警察官から連絡が入った




ノートパソコンで【 東京卍會 】を検索するも欲しい情報が出てこない





「( 今時の子達は、


　何を考えてるのか分からないなぁ )」




なんてノートパソコンを閉じ、カレンダーに視線を移す




今日は10月31日




警察官にとって1番忙しい日と言っても過言ではない日だ




「 …………良いなぁ、私も仮装して


　渋谷の街を歩き回りたいなぁ〜〜！ 」




椅子の背もたれに身を預けては、そんな欲をぶちまけるのであった。

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