二兎追うものは一兎も得ず【 灰谷兄弟 】

十一話 ページ16

　
　
　
京浜運河。




"品川区、大田区、川崎市をへて横浜市鶴見区大黒埠頭まで続く運河の総称"




と、何かの本に書いていたのを思い出した。




車でおよそ10分程。私は免許取り立ての初心者ドライバーなので10分では着かず、20分程で到着




これが命に関わるものであったら怒鳴られ案件だ




「( しかも暴走族の応援だなんて…… )」




暴走族相手は男性が多く付くはず




なのに女性の私が応援に駆り出されるのは何かの間違いだと思いたい




ひとまず木下さんを探そうと、川を横に駆け出した





────────────────────────




「 オラァッ"！！ 」




「 やめッ…ぁッ"！！ 」




生々しい骨の折れる音が響き、地面には血痕が広がっていた




警察官を殴り、胸倉を掴む暴走族




背には【 呪華武 】という文字が縫われていた




「( …凄い見た事がある光景だ…ッ！ )」




あの時は特に彼らの中に入り込んだりはしなかったものの、今回はそういかない様に見える




「 おい"コイツらのせいで相手逃げちまったぞ 」



「 力振り絞れよォ"！！サツがぁ"！！！ 」




「 男だろうがテメェ"！ 」




高笑いをする彼らの掴む手には、目を逸らしてしまう程の悲惨な先輩達の姿があった




そして髪が真ん中にしかないガタイの良い不良に胸倉を掴まれている男性




「( へ、木下さん…ッ！？ )」




ボロボロの姿、血だらけの顔面




「 おいテメェ……ッ

　
　今さっき、誰と連絡を取ってたんだぁ？ 」




「 ………ッゲホ、…言える訳、ないだろッ" 」




先輩は吐血しながら睨む様な目付きをしている様に見えた




だが、次の瞬間




「 ぁ"ッ！！………… 」




木下さんの声が遠くに居た私の所まで聞こえ、力が抜けた様に不気味に身体が揺れている




「( ッ……顔面に、1発…ッ！？ )」




強い拳が顔面を殴る音




完全に木下さんは気絶した




「 おいテメェらぁ！！


　この後応援のサツ共が来るかもしれねぇ


　やることは分かってるよなぁ"！？ 」




「「 うっす！！ 」」




私は1歩後退りをした




──────無理だッ！！




警察官をあんなにもボロボロさせ瀕死状態にッ




こんな私が行っても返り討ちにされ病院行きだ！




…………でも、此処で諦めたらどうなる？




分かりきったこと。被害は倍増する




「 …………ッ、行くしかない！！ 」




私は腕を捲り、木下さん達の所へ足を進ませた。

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