二兎追うものは一兎も得ず【 灰谷兄弟 】

七話 ページ12

　
　
　
「 ………A、あんた

　すっっっごい目の下に隈出来てるよ…？ 」




「 へ？ 」




数日後。先輩と勤務交替する時、去り際に先輩から言われた言葉




私は重たい顔を上げ、先輩に反応した




「 何があったか知らないけど無理はしないでね


　あんた、猪突猛進系女警察官なんだから 」




「 なんですかぁ、その表現〜〜 」




デスクの椅子に座り込むと背もたれが沈み込む





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…………数日前




路地裏にて鉄フェンスに繋がれたまま彼ら、"灰谷兄弟"に置き去りにされ数時間。




やっとのこと鍵を手に入れ、手錠に差し込んだのだが




『 はッ、これ、合ってない…ッ！？ 』




彼らから渡された鍵は手錠の鍵じゃなく、ペアの分からない鍵であった




鍵穴に細い棒を入れ解錠する方法はあるが、そもそもやったことがない




…その後はひたすら声を張り、助けを求めていたところを一般の方に見つかり何とか解錠出来たのだ




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「 じゃあA、

　
　この依頼だけは頭に入れててね。


　まだ解決してないから 」




「 分かりましたぁ… 」




嫌な記憶を思い出し頭を抱えるも




ふと先輩が置いていった書類に視線を向けた




【 六本木駅にて、"わいせつ行為"発生！ 】




先輩の可愛らしい文字で記載されていたのは




何やら六本木駅で発生した"わいせつ行為"の様だ




時間帯は午後21時頃




被害者女性の口述 "胸を触られた"のみ




加害者の特徴 "黒キャップ帽に赤い服、黒のリュックサック、眼鏡"




「 …………、午後21時頃。


　酔った勢いで犯行に及んだ…とか？ 」




「 おまわりさんや、…ちょいと、いいかい？ 」




「 あ、はいッ！！

　
　おばあちゃんおはようございます！ 」




加害者は胸を触っただけのわいせつ行為




酔った勢いか女性の身体に興味を抱いたか……




この2つが1番近いかもしれない




「( これは挽回のチャンス…！！


　あの時失ったもの全てを！この依頼で


　取り戻してみせる…ッ！！ )」




「 おまわりさんおまわりさん


　六本木駅は何処かい？ 」




「 あ"、す、すみません！えーと六本木駅は… 」




午前10時30分




まさかこの後、六本木駅で似た"事件"が起きるとは




この時の私は知る由もなかった

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