帝都活劇 泡沫モダニズム【オリジナル】

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「あ！そういえば、さっきから疑問だったんすけど、袴なのって大正生まれだから……？」

「そうかな、確かに、洋服が主流だから目立つね、洋服高くない？」

「今じゃ着物の方が高い印象ありますよ」

時代が変わりすぎた。
もはや本当に僕の生きていた世界と同じか疑う。僕みたいに一部に取り入れているのは結構いたけど。初めて銀座で洋服を仕立てて貰ったのを思い出す。
袖を通した時の違和感は忘れられない。腕にまとわりつく感じがもどかしくて、でも気持ちがしゃんとする。
それから＿＿＿あー、誰だったかな、誰かと写真館で写真を撮った。嬉しくてしょうがなかったのを覚えている。

「……？」

「あ、ごめん。昔の事思い出しちゃって」

「大丈夫っすよ」

「そういえば！君が先程着けていたあれは何？耳のやつ！」

「耳の……？え、あ！これか！」

そう言って山本君は鞄から小さな容器を取り出した。
中を彼が開けると、あれが出てきた。

「イヤホンっていって、そのー、んー、音楽聞く道具……ラジオの小さい版的な？」

「携帯ラジオ……とでもいうのかい？そりゃあ便利な時代になったものだ」

「こうやって、着けるんすよ」

彼は両耳にいやほんとやらを着けた。軽そうだし、持ち運びも楽だと見える。
これでニュースとか聞けるなら大変便利だ。僕も一つ持っておきたい。

「着けてみます？」

「いいのかい？」

山本君は僕にいやほんを手渡し、先程彼が着けたように装着しろと促した。

僕は全くの新感覚に少し身体が震えた。
耳の穴が圧迫される感じではあるが、重くないし、走ること位なら着けたままでも可能ではないかと思えた。

「こんな感じでみんな使いますかね」

山本君は例の「四角い端末」を取り出し、何やら操作をしている。
するとどうだろう！
いきなりこのいやほんから音が出たではないか。

「わっ！」

思わず声が出る。こんな近くで音を聞いたことはない。
しかも流れているのは全く分からない奇妙な、恐らく現代の音楽であろう。
慣れない曲調に頭が痛くなる。

「周りみんなつけてるんすよ」

先進的でそそる。
しかし無くさないのだろうか。周りの音は？
気になる点は様々だが彼に礼を言って返した。

暫しの沈黙。
音楽か……なにが流行っていただろうか。
北原白秋？浅草オペラ？東京音頭？
今じゃ古臭いのだろうか。先程の音楽はごちゃごちゃし過ぎさ。
もっとも、僕は音楽の専門家でないから語ることなど上辺でしかないが。

静かに彼に着いて行く。

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