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他の学生が描いた作品たちの中で、自分の描いたあの絵はある種異彩を放っていた。生々しい色使い、人の内面を覗き込み具現化した欲望、だがこうして自分の手からはなれたあの絵はまるで陳腐だ。

青二才の描く説得力に欠けた絵、飾られていることすら恥ずかしくなって、本当は直視できない。あの老紳士に指摘されるまでは、あんなにも自信を持っていたというのに。



俺の絵の前で、人は足を止めない。それが全てのように思えた。



「きんときくんの描いた絵はどれなの?」

「・・・・・・俺のはいいでしょ。Aさんの友達が描いたものを教えてよ。何てタイトルなの?水彩って言ってたよね」

「タイトルは分かんないけど」



俺の後ろをついて歩くAさんは、並べられた絵を一つ一つ眺めていく。
そう時間をかけることをしないその姿に、芸術に頓着のない人はこうも創作物に対して興味を持たないものかとどこか寂しいような感情が芽生えたが、それなら、自分の絵も素通りしてほしいと思った。



誰も足を止めることをしない俺の絵の前にはまるでそこにだけ人除けのまじないでも施されているかのようだった。その絵に辿り着くのと、彼女が友人の描いたという水彩画を見つけるのとではどちらが早いのか。

だけど俺たちが向かう順路の先に、水彩画は当分ない。とうとう彼女が俺の絵の前に辿り着いた、そのまま一瞥だけして素通りしてくれるのならば良かった。だが、彼女は足を止める。

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作者名:やなぎ | 作成日時:2024年1月18日 11時

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