【ﾜｰﾄﾘ】好きだ (ページ10)

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10話ページ10

◇

スマホを開いてすぐ、しまった、とAは思った。
トークアプリに通知が入っていたので確認すると、風間から夕刻にメッセージが届いていたからだ。

トーク画面には

・すまん。開発室を探したが見つからなかった
・用件は明日聞く。いいか？

と書かれていた。

そこで、会議の前に風間に声を掛けていたことをようやく思い出したのだ。

用は何ということもない、大学の調査協力を依頼するため大学生隊員に声を掛けていただけなのだが、開発室からの帰りに迅と会い、流れで玉狛に来てからはすっかり忘れてしまっていた。

時計を見ると20時にさしかかっている。
風間さんは起きているだろうか。

◇

「……おい、風間。携帯鳴ってんぞ」
「ん……」
諏訪が風間の肩を揺らすも、風間は机に伏せたまま気だるそうに返事を返すのみだ。

「駄目だねこりゃ」
ごぞごぞと風間のバッグを漁り、バイブ音を鳴らすそれを取り出す寺島。着信元をチラリと見ると、どうやらAからの着信のようだ。

「んーAだ」
「マジでか。まさかこいつら付き合ってんのかよ」

「おい。あまり人の携帯を触らない方が」

木崎の忠告もむなしく、寺島の手は応答ボタンに置かれた。
「もしもし、A？」

『あれ？風間さん？』
電話の向こうから、着信元の子の声がした。

「違う、寺島だけど」
『へ？寺島さんが何で』
「勝手に出てごめん。風間たちと飲んででさ。
そういや今日、風間に用があったんだよね。会えた？」
『あ、その、実は私の方がすっかり忘れてて……謝ろうと』

「あー別にそれくらいじゃ怒らないと思うよ。それと、風間のやつは潰れてて寝てるからさ」
『だ、大丈夫ですか？』
「んー平常運転。迎えに来る？」
『えっ』

◇

風間さんが潰れて寝ていると聞いて、見たくなった自分は横しまな奴だろうか。
「こっちも玉狛で食べてるから、行けません」と返した先で、ふうんと寺島が相槌を打つ。

一体誰に向けた説明だったのだろう。何よりも自分のために発した言葉のようだ。

「A」
電話口の声が変わった。落ち着いた声で、すぐにそれが木崎レイジであると分かる。
「レイジさん！」
「玉狛に居るんだな」
「迅くんに誘ってもらって久しぶりに来てるよ」
「帰りは遠いだろう。後で誰かに送ってもらえ」

電話を切るとすぐに陽太郎が絡んでくる。
「誰と話していたんだ？レイジか？」と聞いてきたから、「まあそうだね」と言った。