守りたかったもの 5 ページ31
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「た、太輔っ…?」
「やっ…」
ギュッと俺の服を掴む手が震えている。
「やっ…や、だ…」
「うん、ごめん。オムライス嫌なんだね」
抱き寄せてよしよしと頭を撫でれば少しずつ落ち着きを取り戻す太輔
濡れた頬をそっと拭ってあげると擦寄るように身を寄せられて今の太輔には俺が全てなんだって感じて変に心が満たされた。
「太輔、大丈夫だよ?ずっとそばにいるからね」
「…た」
「ん…?」
「わ、た…」
「はいはい?」
「いっしょ…」
「うん、一緒にいるよ?太輔が嫌って言わない限りずっと…」
俺の言葉にようやく頬が緩んで少しだけ笑ったように見えた。
翌日だいぶ顔色も良くなった太輔に「散歩行こうか?」って言ったらコクリと頷くから充分に厚着をさせて車の助手席に乗せる。
「お天気良くなって良かったね」
人の多いところに行ってもし気づかれたらと思って都内でも緑の多い山間部の渓谷へと車を走らせた。
「海はもうちょっと暖かくなったらにしようね」
車を停めて手を引いてゆっくりと遊歩道を歩く。
「大丈夫?疲れてない?」
「だいじょぶ…」
程なくしてたどり着いた滝の前のベンチに座って作ってきたお弁当を広げる。
「はい、どうぞ〜」
ポットに入れてきたスープからは優しい湯気がたっている。
それをゆっくり飲む太輔を横目に見て自分用に作ってきたおにぎりを食べ始めた。
「滝の音が気持ちいいね」
「うん…キレイな音…」
太輔の家に泊まり込み始めてから数日経ってようやく会話が成り立つようになってきた。
まだ前のようにはいかないけど少しずつ日常を取り戻し始めたことに安堵した。
「太輔の歌声も綺麗だよ。俺大好き」
「うそ…」
「嘘ついてどうすんの?俺、藤ヶ谷.太輔の一番のファンだもん。一番近くで聴ける超贅沢なファン」
「ファン…なの?」
「そう、ファン。超強火♪」
「そっか…」
少し照れながらスープの入ったカップを萌え袖で包み込んでいる太輔が愛しくて抱き締めたい衝動に駆られる。
「さてと…スープ飲み終わった?ゆっくり歩いて車まで戻ろっか?」
今すぐにその体温を感じたくて手早く片付けて立ち上がり太輔の手を取る。
「わた…」
「んー?」
「ありがと…」
「どういたしまして〜」
キュッと握られた手から伝わる温もり
この温もりをずっとそばで感じていけたら
それでいい
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美結(プロフ) - 完結おめでとうございます ! お疲れ様でした ! 最初は切なくて切なくて胸が張り裂けそうでしたが、だんだんと甘くなっていく二人にドキドキでした。最後は幸せになってくれて良かったです ! いってきますのキスに胸きゅんな終わり方、ありがとうございます(*^_^*) (2016年1月2日 21時) (レス) id: 5cd71a055a (このIDを非表示/違反報告)
野菜(プロフ) - 完結おめでとうございます、お疲れ様でした!2人が幸せになって本当に良かったー!ヽ(;▽;)ノ想い違い、すれ違い、素直に言葉に出来ない2人を見る度に、やるせない気持ちに身悶えて壁に頭をガンガン打ち付けていましたが、これで安心して眠れます。゚(゚´Д`゚)゚。 (2016年1月2日 18時) (レス) id: 5164ca8059 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃(プロフ) - 完結おめでとうございます。ハラハラドキドキなんでそこで素直になんないの!ってやきもきしながら読み続けて良かったです。これからもちょっといじわるな所もある渉さんに振り回されながらも幸せになって欲しいです。(*≧艸≦) (2016年1月2日 12時) (レス) id: cdf6ae2f76 (このIDを非表示/違反報告)
とみぃ(プロフ) - 完結おめでとうございます!無事、二人とも幸せになることができ、良かったです( ^ω^ )ハラハラしながらどうなるのか、楽しかったです。 (2016年1月2日 12時) (レス) id: 2539a7cb49 (このIDを非表示/違反報告)
かやたび(プロフ) - お疲れさまです!ゆっくりと解けるように近くなっていく二人を見守ってきて良かった…そう思います。辛抱強いくせにちょっと意地悪なラストの渉さんが…大好きでした。ありがとうございました。 (2016年1月2日 12時) (レス) id: 8d7da4828d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:you | 作成日時:2015年4月13日 23時