Distance -YF-

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F


移動車が停まって今夜の夕食を摂る店に降り立った。


店内に入るといつもだったら渉の隣に座るのにそこは移動車と同じようにニカが座ってて仕方なく空いていた端っこの席に座る。
ライブの興奮冷めやらぬ感じで各所で盛り上がっているけどそんな気になれる訳もなくてただただグラスに入った酒を次々空けていった。


「おい…お前大丈夫か？」

いつの間にか向かいの席に移動して来ていた北山の声がする。

「は？何が…？」

「飲み過ぎだっつーの」

その言葉とともに強引に手からグラスが奪われる。

「よこーさん！」

なんで渉呼ぶんだよ

「なに？」

「水貰ってくれる？」

「りょーかい」

ちょっと霞がかかった視界の中で渉が店員を呼び止め水を頼んでいるのが見えた。程なくして届けられた水を持った渉が自分の隣に座って思わず身構える。

「はい、お水…」

「…ありがと」

「あっ…」

グラスを受け取ろうとした時に一瞬だけ指先が触れ合った感触に全身に緊張が走って取り落とす。

「冷てっ…」

そばにあったおしぼりで手早く溢れた水を拭く渉をボンヤリ見つめる。

「太輔、濡れなかった？」

そう言いながら聞いてくる渉の顔が思いかけず近くにあって後退る。

「だ、いじょぶ…」

「新しいの貰ってくるね」

なにも出来ずにいるオレにそう言って渉が席を立っていった。

「あ…」




行っちゃった…

もっとそばにいて欲しいのに

手離したのはオレ

もうその腕に縋る事は許されないのだから



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