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第一話:悪夢の前の平穏 ページ3

夏の日差しが、じりじりと暑い、とある朝のこと。


『カァァァ!! 日輪ァァ!! 日輪ァァァ!! 炎柱・煉獄杏寿郎ノ家ヘ向カェェ!!
 オ前ニィィ!! 届ケラレタ荷物ヲ、届ケルノダァァ!!!』

「完全に、誤配じゃねぇか!!!」


藤色の風呂敷に包まれた、細長い桐箱を携えて、行き慣れた煉獄邸までの道のりを歩く。

道中の家の軒先には、朝顔の鉢植えが置かれていたり、打ち水がされたりと、
夏の様相が漂っていた。


「というか誤配なら、届けた飛脚にでも突っ返せば良かったんじゃ……」

『ケケケ』

「ケケケて」


カラスと喋りながら、昔、煉獄邸に住んでいた時のことを思い出す。


あの頃は、毎日、師範に稽古をつけて貰って、杏寿郎と毎日のように手合わせをして、
千寿郎とも一緒に、よく遊んでいた。


師範の奥方様も、まだ生きていて。


家族が生きていた時より、下手をしたら、幸せだったかもしれない。



(師範には……きっと、お考えがある筈だ)



師範の奥方様が亡くなってから、師範は剣士をやめた。

何の脈絡もなく、酒に入り浸って、人が変わったようになった。


杏寿郎は、何も言わなかった。

正確には、『師範のことを、何一つ悪く言わなかった』。



そして、千寿郎のことを励まし続けていた。



師範が教えることをやめた後も、自分は杏寿郎と共に指南書を読みふけって、
稽古をして、鍛錬をして、鬼殺隊に入隊した。


鬼殺隊に入隊した後も、煉獄邸に住んで、杏寿郎と鍛錬をして、千寿郎に稽古をつけて。


そうして、いつかは自分も『柱』になるのだと。


そう……



(思ってたんだけど。全然、極められなかった)



自分の刀は、黒刀だった。
数が少なすぎて詳細も分からず、出世できないと言われている、あの黒刀だ。


それでも鍛錬をしていれば、『炎の呼吸』でも、いつかは極められると。
そう、信じてやってきた。


けれど、いつまで経っても、杏寿郎のように『炎の呼吸』を極めることは、できなかった。



(やっぱり、呼吸を派生させた方が……)



ヒュウと風が逆巻いたような音を聞きつつ、考え事をしていると、
いつの間にか、そこには見慣れた屋敷と、見慣れた顔の少年が立っていた。




「あ、日輪さん!!」

「久し振りだな、千寿郎」

第二話:悪夢の前の平穏 2→←プロローグ



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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 黒死牟   
作品ジャンル:恋愛
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神亜(プロフ) - とても面白です! 日輪ちゃんはどうなってしまうのか...とても気になります! 更新、無理しないで頑張ってください 応援してます 続けぇぇ (2020年5月30日 9時) (レス) id: 7ae973559f (このIDを非表示/違反報告)
- 続いてええええ! (2020年4月14日 23時) (レス) id: 584f216f44 (このIDを非表示/違反報告)
青鈴 - とてもとても好きです!!私が頭のなかで思い描いてた話と近いので見ていて楽しいです! (2019年9月13日 16時) (レス) id: 681f1f52c6 (このIDを非表示/違反報告)
大福もやし - 今後の展開が、気になります (2019年9月9日 3時) (レス) id: 46531bb7b7 (このIDを非表示/違反報告)
玲音チャン - めっちゃ好きですぅぅぅぅぅぅぅうぅぅうう!!!!!!更新頑張って下さい!応援してます! (2019年8月27日 21時) (レス) id: b000323d2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:露草 | 作成日時:2019年7月11日 3時

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