検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:156,080 hit

第十三話:残された者 ページ16

煉獄杏寿郎・視点



日輪の葬式が終わってから、数日が過ぎた。

死体は見付からず、現場には大量の血痕と、日輪の羽織の袖が残されていた事から、
日輪は死亡したと判断された。



「兄上、何処かに出掛けられるのですか……?」

「あぁ!!今から、日輪が住んでいた部屋に、荷物を取りに行ってくる!!
 千寿郎、留守を頼んだぞ!!」


隊服を着て、羽織を肩に掛けた、自分の様子に気付いたのか、千寿郎が尋ねる。
その問いに、自分は快活に返事をして、刀を腰に佩いた。


「分かりました。気を付けて下さいね」

「あぁ!なるべく、早く帰って来るからな!!」


千寿郎の言葉に、安心させるように力強く答える。
日輪が死んでから、千寿郎は無理をして笑うようになった。


(日輪の葬式が終わってから、まだ、数日しか経っていない……
 千寿郎の為にも、早く帰って来なければ……)


そう思いながら、廊下を歩いて玄関に向かい、戦闘によって、擦り切れ始めた
草履を履いた。


「それでは、千寿郎。行ってくる!」


行きの挨拶をして、玄関の引き戸を開けて外に出ようとした、その時だった。


千寿郎に、羽織の袖を強く掴まれ、引き留められた。


「あ、兄上……」

「どうした、千寿郎!」


違う。理由など、本当は分かり切っていた。



「兄上は……帰って来て、くださいますよね……?」



泣きそうな顔をしながら、千寿郎が、か細い声で尋ねる。
握り締められた羽織の袖には、ポタポタと涙が零れ落ちていた。



『信じてくれ。必ず、お前の元に生きて帰る』



あの日、そう言って、正面から笑いかけた日輪は、もういない。


昔から、太陽のようだった。日輪がいるだけで、いつも周りが明るくなった。
けれど、日輪は進むのが早かった。いつも、生き急いでいる様だった。


その様子が、自分には、どこか月の様に見えていた。



(お前に近付いたかと思うと、いつもそうだ……)


自分の心が、キリキリと軋む様に痛む。今すぐにでも、泣いてしまいたくなる。



――俺は、お前のことが、ずっと好きだった。



感情を呑み込んで、自分は、千寿郎に目線を合わせる為に、しゃがみ込み、
快活に言葉を発した。



「大丈夫だ!!日輪も兄も、いつもお前の傍にいる!!

 例え、どれだけの壁が!時間が!距離が!俺達を隔てようとも!!

 心は、どこまでだって一緒だ!消える事は無い!!

 日輪の心も、ずっと一緒だ!!」




千寿郎の泣き声が、屋敷に大きく響いた。

第十四話:地下牢の怪→←第十二話:朝と夜の世界



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (429 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
816人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 黒死牟   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

神亜(プロフ) - とても面白です! 日輪ちゃんはどうなってしまうのか...とても気になります! 更新、無理しないで頑張ってください 応援してます 続けぇぇ (2020年5月30日 9時) (レス) id: 7ae973559f (このIDを非表示/違反報告)
- 続いてええええ! (2020年4月14日 23時) (レス) id: 584f216f44 (このIDを非表示/違反報告)
青鈴 - とてもとても好きです!!私が頭のなかで思い描いてた話と近いので見ていて楽しいです! (2019年9月13日 16時) (レス) id: 681f1f52c6 (このIDを非表示/違反報告)
大福もやし - 今後の展開が、気になります (2019年9月9日 3時) (レス) id: 46531bb7b7 (このIDを非表示/違反報告)
玲音チャン - めっちゃ好きですぅぅぅぅぅぅぅうぅぅうう!!!!!!更新頑張って下さい!応援してます! (2019年8月27日 21時) (レス) id: b000323d2b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:露草 | 作成日時:2019年7月11日 3時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。