第十二話：朝と夜の世界 ページ15
夏の日差しの中、とある屋敷の縁側で、膝にカラスを乗せた男性が座っていた。
近くには、その男性の子供と思われる、髪が白く、おかっぱの少女が二人、
控えている。
「そうか、日輪は『上弦の鬼』と戦って、女性を守り抜いたのか。
日輪は、頑張ったんだね。凄い子だ」
膝に乗せたカラスを撫でながら、男性は不思議な声色で、尚も続ける。
「日輪の鎹鴉も、よく頑張ったんだね。最期まで、『情報を引き継ごうとした』。
二人共、本当に凄い子だ」
男性はそう言うと、膝に乗せていたカラスを抱き上げ、少女の手を借りながら、
その場を立ち上がった。
「この情報は、想いは。必ず、後世に引き継がれてゆく。
日輪の想いは、『鬼を滅する為の『不滅』となったんだね』」
男性の不思議な声色が、美しい夏の庭に溶け込んでいった。
――第十二話：朝と夜の世界――
地下牢の壁にもたれながら、ぼんやりと畳の上に転がる毬を見る。
自分の意識は、朦朧としており、絶えない飢餓感だけが、ずっと訴え続けていた。
上弦の壱に殺されかけ、『鬼』となってから、幾つかの夜が過ぎた。
自分は未だ、人間を喰べていない。
重度の飢餓感が、ずっと、自分を襲い続ける日々の中、それを、我慢し、耐えながら、
今も日々を暮らしている。
『あの鬼』との繋がりが、未だ途絶えないまま。
「人の肉だ……喰え……」
軋む音を立てて、地下牢の扉が開いた。
その扉を開けたのは、『上弦の壱』こと『黒死牟』という名の鬼だった。
扉が開くと同時に、部屋の中に、数人の女性の死体が、床に放り出される。
その女性のどれもが血を流しており、『とても、美味しそう』に感じた。
直ぐに体が反応し、口から唾液が、ダラダラと溢れ出てくる。
「今日は、女の肉を狩ってきた……今宵で、十六になる女の肉だ……
十六の娘は、美味いと聞く……全く、喰べようとしないお前には、
丁度いいだろう……」
強い飢餓感から、理性が飛んで、今にも人間の体に喰らい付きそうになる。
瞬間、自分の腕に噛み付き、衝動を抑えた。
「自分の腕を……噛むなと、言っているだろう……鬼とはいえ、傷が付く……」
そう言って、黒死牟は、自分が噛んでいた腕を捉えた。
「お前は、『鬼』だ……人間を喰うことを、抑える必要は無い……」
黒死牟の指先が、自分の頬をなぞって、零れた唾液を掬い上げた。
『鬼』としての苦難は、まだ、始まったばかりに過ぎない。
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神亜(プロフ) - とても面白です！ 日輪ちゃんはどうなってしまうのか...とても気になります！ 更新、無理しないで頑張ってください 応援してます 続けぇぇ (2020年5月30日 9時) (
レス) id: 7ae973559f (このIDを非表示/違反報告)
し - 続いてええええ！ (2020年4月14日 23時) (レス) id: 584f216f44 (このIDを非表示/違反報告)
青鈴 - とてもとても好きです！！私が頭のなかで思い描いてた話と近いので見ていて楽しいです！ (2019年9月13日 16時) (レス) id: 681f1f52c6 (このIDを非表示/違反報告)
大福もやし - 今後の展開が、気になります (2019年9月9日 3時) (レス) id: 46531bb7b7 (このIDを非表示/違反報告)
玲音ﾁｬﾝ - めっちゃ好きですぅぅぅぅぅぅぅうぅぅうう!!!!!!更新頑張って下さい！応援してます！ (2019年8月27日 21時) (レス) id: b000323d2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：露草 | 作成日時：2019年7月11日 3時
