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第十一話:上弦との攻防 5 ページ13

自分の近くにいるであろう、鎹鴉に届くように大声で叫ぶ。
右手だけで折れた刀を強く握り、炎の呼吸をなぞるように、強く構えた。


「鎹鴉か……無意味なことだ……」

「無意味かどうかは、自分で決める! お前が決める事じゃない!!」


そう言って、左足を強く踏ん張り、炎の呼吸によって技を打ち出そうとした。


『炎の呼吸・壱ノ――――!』



「無意味だと、思わないのか……それもまた、一興……」



次の瞬間。全身から、霧雨のように血が吹き出した。
突然のことに、体がフワリと浮いて、止まったように感じる。


自分の隣を見ると、そこには何食わぬ顔をした、上弦の壱が立っていた。


「強き者と戦うのは……存外、面白きこと……」

「ッ”っ…………ッ”〜〜!!」


自分の喉から、声にならない悲鳴を上げながら、体中にできた小さな傷と共に、
地面に倒れ込む。


血と土の匂いが強くなった中。ほんの少しだけ、『あり得ない匂い』がした。


「お前は、血を流して……地面に倒れている様が……一番、似合っているな……」

「ッ”っ〜〜…………!!」

「そんなに、怒るな……折角、褒めているのだから……」


自分の腹部から溢れてきた血液の上を這って、折れた刀に手を伸ばす。
体温を失い、冷たくなった指先が、刀の柄に触れた。


「だが……今回は、少し遊び過ぎた……まさか、お前が……本能で戦うことを……
 拒絶しないとは……」


上弦の壱の声が、ヒュウと、風が逆巻くような音と共に鼓膜に響く。
冷たくなった指先を、刀の柄と共に、掌の方へ握り込もうと動かした。


「案ずるな……鬼となれば……人間であった記憶は、殆ど無くなる……
 人を喰うことを……厭う必要も無い……」


言葉を紡いで反論しようとするが、むせ込んで、それも叶わない。


「『あの御方』にさえ、選ばれれば……お前も晴れて、鬼となる……
 その前に……お前には、『私の血』を分けてやろう……
 嘘だったとはいえ……お前は一度、『鬼となること』を受け入れた……」


上弦の壱の言葉に、時が止まったかのような感覚となる。



瞬間、自害をしようと口を開いた。


「駄目だ……お前は、逃れられない……」


一瞬で、舌を抑えるように、口に指を突っ込まれる。
顔が上を向いた事によって、上弦の壱の顔がよく見えた。


「鬼となって、永遠に極め続けよう……私と、共に……」


上弦の壱からは、『嘘』と『幸せ』の匂いがした。





――この日、私は鬼となった。

幕間:煉獄杏寿郎の幸せ→←第十話:上弦との攻防 4



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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 黒死牟   
作品ジャンル:恋愛
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神亜(プロフ) - とても面白です! 日輪ちゃんはどうなってしまうのか...とても気になります! 更新、無理しないで頑張ってください 応援してます 続けぇぇ (2020年5月30日 9時) (レス) id: 7ae973559f (このIDを非表示/違反報告)
- 続いてええええ! (2020年4月14日 23時) (レス) id: 584f216f44 (このIDを非表示/違反報告)
青鈴 - とてもとても好きです!!私が頭のなかで思い描いてた話と近いので見ていて楽しいです! (2019年9月13日 16時) (レス) id: 681f1f52c6 (このIDを非表示/違反報告)
大福もやし - 今後の展開が、気になります (2019年9月9日 3時) (レス) id: 46531bb7b7 (このIDを非表示/違反報告)
玲音チャン - めっちゃ好きですぅぅぅぅぅぅぅうぅぅうう!!!!!!更新頑張って下さい!応援してます! (2019年8月27日 21時) (レス) id: b000323d2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:露草 | 作成日時:2019年7月11日 3時

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