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プロローグ ページ2

「今まで、お前は……きっと、惨めな思いで……鍛錬をしてきたことだろう……」


体の傷が、じりじり、じりじりと。
地面に溢れ始めた、自分の血液を感じながら、折れた刀に手を伸ばす。

(杏寿郎……お前は、来るなよ……)



「どれだけ、どれだけ……鍛錬をしても、呼吸が極められない」


  「何故か」



体温を失い、冷たくなり始めた指先が、折れた刀の柄に触れる。

(カラス……お前は、無事に……お館様のところへ……)



「お前は……お前が知っている、どの呼吸にも……適していない体だからだ……」



腹部から、指先よりも温かいものが溢れてくる。最早、呼吸での止血も叶わない。
冷えた指先が捉えたのは、気難しい刀鍛冶が打った、漆黒の刀。

(鋼鐵塚さん……流石に、あの世までは来ないで……)



「だが、私だけが知っている……私だけが、教えられる……」



刹那、地面をズリズリと這いずっていた自分の体が、抱きかかえられた。

浅く、ハクハクと呼吸をしながら、出血によって酷く朦朧とした頭を回して、
今しがた、自分を抱き上げた『鬼』を見上げる。



「さぁ、お前も鬼となって……永遠に極め続けよう……」



その瞳は、ヒトの異形を思わせるかのように六つあり、顔の面積の半分以上を
占めているように見えた。

そして、何より……



「私と、共に……」



その瞳には、『上弦・壱』と。確かにそう、刻まれていた。



(あぁ、やっぱり……駄目……だったか……)


いつの間に捕まえていたのか。
そこには、『上弦の壱』に無造作に掴まれ、ボタボタと血を流す、自分の鎹鴉がいた。








――この日、私は鬼となった。

第一話:悪夢の前の平穏→←設定



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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 黒死牟   
作品ジャンル:恋愛
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神亜(プロフ) - とても面白です! 日輪ちゃんはどうなってしまうのか...とても気になります! 更新、無理しないで頑張ってください 応援してます 続けぇぇ (2020年5月30日 9時) (レス) id: 7ae973559f (このIDを非表示/違反報告)
- 続いてええええ! (2020年4月14日 23時) (レス) id: 584f216f44 (このIDを非表示/違反報告)
青鈴 - とてもとても好きです!!私が頭のなかで思い描いてた話と近いので見ていて楽しいです! (2019年9月13日 16時) (レス) id: 681f1f52c6 (このIDを非表示/違反報告)
大福もやし - 今後の展開が、気になります (2019年9月9日 3時) (レス) id: 46531bb7b7 (このIDを非表示/違反報告)
玲音チャン - めっちゃ好きですぅぅぅぅぅぅぅうぅぅうう!!!!!!更新頑張って下さい!応援してます! (2019年8月27日 21時) (レス) id: b000323d2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:露草 | 作成日時:2019年7月11日 3時

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