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第六話:上弦の鬼 ページ8

隣にいた女性の襟首をつかみ、強引に後ろの方へ飛び下がる。

自分の左腕が、時間差を物語るかのように、遅れて大きく出血した。
呼吸を使って、素早く出血を止める。



「今のを……避けたか……」



その言葉を聞いた瞬間、自分の背筋に骨が鳴るような悪寒を感じた。

凄まじい圧迫感、今までに感じたことが無いほどの鬼々。

それと同時に感じたのは、『絶対、この鬼には勝てない』ということだった。



(間違いない……この鬼は、上弦だ)

ごくりと生唾を呑み、刀を構え、先ほどまで、自分達がいた場所を確かめる。



その場所には、一人の剣士のような鬼が立っていた。



その鬼の顔には、人間の異形を表すかのように六つの目があり、顔の半分以上の面積を
占めている。

そして、その瞳の中には、『上弦・壱』と。確かにそう、刻まれていた。




(今日は、本当に運が悪い……)


このままでは、自分諸共、この女性まで殺されてしまう。

だが、自分が犠牲になってでも、せめて、この女性だけは逃がし切らなければ。



『死ぬなよ、絶対に死ぬな』

ふと、夏の日差しの中、杏寿郎に言われた言葉が思い浮かんだ。


『日輪、次の任務が終わったら、必ずここに帰って来い。必ずだ』


(杏寿郎……杏寿郎…………悪い、生きて帰れそうにない)



それでも、必ず、この女性だけは助けてみせる。



「……ご婦人。合図をしたら、そのまま逃げて下さい。どこでも良い。とにかく遠くへ。
 大丈夫、貴方は助かる。私が、時間を稼ぎます」


「は、はいっ……!」


その場でへたり込んでいた女性が、何とか気力を振り絞ったのか、震えた声で返事をした。



「無意味な……ことだ……」



上弦の壱が喋ったと同時に、一気に呼吸を、闘気を練り上げる。

(少しでも、長く持てば良い!! 少しでも……少しでもっ……!!)


『炎の呼吸・伍ノ型――炎虎』


「今だ!! 逃げろ!!!」


闘気が、燃え上がるように熱く、猛虎のように上弦の壱へと襲い掛かる。
剣技によって土煙が舞い、周りが見え辛くなった。

(頼む、効いてくれ……!! 効いて……!!!)





「極められない呼吸で、ここまで極めたか……」


それは、先ほどから聞いていた、上弦の壱の声。


「柱をも……超える鍛錬を、しなければ……きっと、ここまでは
 ……来れなかっただろう」


土煙が晴れて、そこにあったのは。



「素晴らしい……」



傷一つ無い上弦の壱と、腹部から流れる、自分の血だった。

第七話:上弦との攻防→←第五話:鬼退治



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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 黒死牟   
作品ジャンル:恋愛
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神亜(プロフ) - とても面白です! 日輪ちゃんはどうなってしまうのか...とても気になります! 更新、無理しないで頑張ってください 応援してます 続けぇぇ (2020年5月30日 9時) (レス) id: 7ae973559f (このIDを非表示/違反報告)
- 続いてええええ! (2020年4月14日 23時) (レス) id: 584f216f44 (このIDを非表示/違反報告)
青鈴 - とてもとても好きです!!私が頭のなかで思い描いてた話と近いので見ていて楽しいです! (2019年9月13日 16時) (レス) id: 681f1f52c6 (このIDを非表示/違反報告)
大福もやし - 今後の展開が、気になります (2019年9月9日 3時) (レス) id: 46531bb7b7 (このIDを非表示/違反報告)
玲音チャン - めっちゃ好きですぅぅぅぅぅぅぅうぅぅうう!!!!!!更新頑張って下さい!応援してます! (2019年8月27日 21時) (レス) id: b000323d2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:露草 | 作成日時:2019年7月11日 3時

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