第三話：悪夢の前の平穏 ３ ページ5
杏寿郎の帰宅によって、屋敷の中が一気に騒がしくなった。
「千寿郎、客人が来ているのか！！」
「おかえりなさい、兄上！ 今日は届け物をしに、日輪さんが来て下さったんですよ！」
「やはりそうか！ 馴染みの気配だとは思っていたが、やはり日輪だったか！」
杏寿郎は障子を開け、「久し振りだな！」と言いながら部屋の中に入って来た。
自分も軽く挨拶をし、さっさと用事を済ませようと、桐箱を前に差し出した。
「家に誤配されたものだ。これ、お前のだろ」
「わざわざ、持って来たのか！ 飛脚に…………！」
杏寿郎が桐箱を受け取ると、不自然に言葉が途切れた。
「どうかしたのか？」
まさか、具合でも悪くなったのかと思いつつ尋ねると、杏寿郎は大きな声で笑いだした。
「まさか、俺がお前に届けたものを、お前が持って来るとは！！
よもや、よもやだ！！」
杏寿郎の言葉を理解するのに、三拍ほどの間がかかった。
「カラス……お前……」
『ケケケ』
「ケケケじゃねェよ」
自分に、『荷物を届けろ』と言った張本人を見て、溜め息を吐く。
きっと、最初からこれが目的だったのだろう。
「悪かったな、杏寿郎。折角、届けて貰ったものを、突っ返すような真似して」
「いや、気にするな！ 俺も丁度、お前に会いたいと思っていたところだ！！」
杏寿郎から桐箱を受け取って、藤色の風呂敷に包み直す。
何となく、中身は自分の家に帰ってから開けた方が良い気がした。
「そういえば、日輪。この間、父上に手紙を出していただろう」
「あぁ、春に出したやつか。まぁ、読まれてないだろうけどな」
いつの間にか、湯呑に注がれていたお茶を飲みながら、視線を左下に落とす。
鬼殺隊に入ってからも、なるべく師範に手紙を書いてはいるが、
返事が返ってきたことは一度も無かった。
「……そうか。すまない」
「お前が謝ることじゃないだろ、気にするな」
少し曇った顔になった杏寿郎に、返事を返す。
手紙の返事が返ってくるか、どうかなんて、些末な問題に過ぎない。
「師範が元気なら、それで充分だ」
「そうか、それはお前らしいな」
曇り空が晴れたように、杏寿郎が笑って見せた。
それを見てから、残りの茶を一気に飲み干し、自分の刀を腰に佩いた。
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神亜(プロフ) - とても面白です！ 日輪ちゃんはどうなってしまうのか...とても気になります！ 更新、無理しないで頑張ってください 応援してます 続けぇぇ (2020年5月30日 9時) (
レス) id: 7ae973559f (このIDを非表示/違反報告)
し - 続いてええええ！ (2020年4月14日 23時) (レス) id: 584f216f44 (このIDを非表示/違反報告)
青鈴 - とてもとても好きです！！私が頭のなかで思い描いてた話と近いので見ていて楽しいです！ (2019年9月13日 16時) (レス) id: 681f1f52c6 (このIDを非表示/違反報告)
大福もやし - 今後の展開が、気になります (2019年9月9日 3時) (レス) id: 46531bb7b7 (このIDを非表示/違反報告)
玲音ﾁｬﾝ - めっちゃ好きですぅぅぅぅぅぅぅうぅぅうう!!!!!!更新頑張って下さい！応援してます！ (2019年8月27日 21時) (レス) id: b000323d2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：露草 | 作成日時：2019年7月11日 3時
