第九話：上弦との攻防 ３ ページ11
突然のことに、思考がピタリと停止する。
失血によって、凍えるように冷たい指先が、地面をツーッとなぞった。
「……何、やって……」
「羽織が、無い為……代わりに、温めている……ここで死なれては、困るからな……」
上弦の壱の腕を、何とか解こうとするが、どう足掻いてもビクともしない。
失血していることもあって、頭がフラフラして仕方がなかった。
(このままだと、身動きが取れない……あの女性は、逃げ切れただろうか……)
全く、体に力が入らないまま、酷く朦朧とした頭で考える。
この体勢のままでは、『最後の手段』を使うことが出来ない。
せめて、少しの時間でも、上弦の壱と大きく距離を引き離す必要がある。
(でも、どうする……今、この状況で、出来る……ことなんて…………)
――あァ、出来る、こトなンテ…………
「……もう、疲れた……もう、嫌だ……」
絶望に陥り、呆然とする意識の中、上弦の壱の背中に腕を回して、着物を掴む。
上弦の壱に縋り付きながら、自分は、上弦の壱の首元に顔を埋めた。
思い出すのは、血反吐を吐いてまで繰り返した鍛錬と、ずっと苦しんでいた、体の痛み。
「もう、鬼殺隊にいるのは……嫌だ……どれだけ、鍛錬をしても認められない……」
ボロボロと涙を零しながら、上弦の壱に縋って話す。
きっと、その姿は無様で、惨めで、滑稽なことだろう。
「体がボロボロになっても……誰かの為に、戦わなければならない……
例え、自分の体が壊れても、命を懸けて戦わなければならない……
そんなの、もう嫌だ……」
上弦の壱は、黙り込んだまま、自分の話を聞き続けている。
自分は、今までのことを、全て吐露するかのように、気にせず続けた。
「どれだけ鍛錬をしても、階級は『乙』から上がらない……！
鬼だって、もう五十は斬った……！！なのにっ……！なのにッ……！！」
上弦の壱の胸に縋り付きながら、ずっと、しゃくり上げて涙を零し続ける。
上弦の壱は、そのまま自分に何もせず、静かに尋ねた。
「……ならば、どうするか。自分の言葉で……言ってみろ……」
「――『鬼』になりたい。私を、『鬼』にして下さい……
もう、苦しいのは……辛いのは、嫌だ……」
自分が涙ながらに上弦の壱を見上げると、上弦の壱は、懐から何かを取り出そうと、
私の肩を押しのけた。
――刹那、炎の一閃が斬り上げられた。
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神亜(プロフ) - とても面白です！ 日輪ちゃんはどうなってしまうのか...とても気になります！ 更新、無理しないで頑張ってください 応援してます 続けぇぇ (2020年5月30日 9時) (
レス) id: 7ae973559f (このIDを非表示/違反報告)
し - 続いてええええ！ (2020年4月14日 23時) (レス) id: 584f216f44 (このIDを非表示/違反報告)
青鈴 - とてもとても好きです！！私が頭のなかで思い描いてた話と近いので見ていて楽しいです！ (2019年9月13日 16時) (レス) id: 681f1f52c6 (このIDを非表示/違反報告)
大福もやし - 今後の展開が、気になります (2019年9月9日 3時) (レス) id: 46531bb7b7 (このIDを非表示/違反報告)
玲音ﾁｬﾝ - めっちゃ好きですぅぅぅぅぅぅぅうぅぅうう!!!!!!更新頑張って下さい！応援してます！ (2019年8月27日 21時) (レス) id: b000323d2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：露草 | 作成日時：2019年7月11日 3時
