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「とっておきの最後の火薬をまさかハッタリに使うハメになるとはな」
千空は鉄の筒に火薬を詰め込み、
端に松明の火をつけた。
ジュッとマッチを擦った時のような音とともに辺りに焦げるような臭いが立ち込める。
「ええ〜ジーマーで？」
その光景を見てか、ゲンも彼が何をしようとしているか察した。ただ火薬と鉄筒だけでは意味がない。
ここはゲンがサポートに回った。
「一番力持ちって誰？」
不安そうにする村人の群衆に大きめの声で問う。
するとクロムが不思議そうな顔でマグマだと答えた。
ゲンはそれを聞いてマグマの方に向き直り、懐から石を取り出した。そして、それを掲げてこう言ったのだ。
「マグマちゃん、敵に投げてよこの石。思いっきりね！」
「あ？？？」
マグマは、クロムに指名されていた際には堂々としていたくせに、ゲンの発言を聞いてからは訳が分からないという顔をした。
どうやらなにをしようとしているか理解できているのは、千空、ゲン、Aの三人だけのようだ。
まあ、普通に考えて石を投げても、野球選手でもなければこの暗闇である。当たる確率はかなり低い。
「当たるわけねぇだろうが！こんなもん！大体誰がてめぇの言うことなんか……」
マグマのプライドから次々に飛び出る反抗の言葉。
来た。策謀力の男の見せ所である。
「村長の座…千空ちゃんから奪いたいんでしょ。村自体無くなっちゃうかもよ？今は共闘しないと」
マグマだけに聞こえるように囁かれた悪魔の言葉。
たしかに間違ってはいない。
村があってこその村長なのだから。
＊
けたたましい音が森に響く。
音はそのまま岩壁に反響し、暫く酷い耳鳴りがした。
直後に橋の下の川で何かが落ちる音。
「一旦引いて氷月ちゃんたち！この村ね、銃が完成しちゃってる……！！」
遠目でわからないが千空が煙をあげる筒を、ゲンがそれを押さえ込んでいる。
一息。なんとかあっちに私の意思が伝わったようだ。
一度氷月を振り返り際に見て、金狼を担ぐと一直線に村に入り込む。
それとは対極に、氷月の部下は一目散に森へ逃げ込んでいった。馬鹿め、こんな短期間で銃なんか作れるか。もしできたらたまったもんじゃない。
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作者名：紙崎 | 作成日時：2020年2月22日 0時
