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御前試合当日。
私は誰にも気づかれないように村を出た。

すぐに出発してもゲンが近くにいたりすると、私がまだ
司帝国派だと聞きつけてしまう可能性があるからだ。

まあ、もし彼の嘘がバレていても司さん達は
すぐには動かないだろう。

その上試合への緊張と士気の高まりで一人ぐらい
減っても誰も気付かないと思ったのだ。





葉から漏れ出る光が少なくなっていくにつれ、
生茂る草花の香りも次第に強くなっていく。


折れた木の先で頬に切り傷ができたが
血を拭うだけにした。

そこで思考が働く。


…ちょっと待て。

『折れた』木の先?


忙しく動かしていた足を止め、反対方向に向かう。

頬を切った枝を見るとかなり太い。
鳥やリスが登って折れたとは思えないほどだ。

形を見るに大型動物や人間が「邪魔だから折ろう」
的な感じで折ったように見てとれる。


まさか、もう司帝国の奴らが?

最悪の事態が脳裏を過ぎる。


急ぎ足で村の方へ足を進めた。


まさか、本当にこんなに早くにくるのか?
勘違いであって欲しい。
もしきていたら弁解の余地はあるのか?


地面を向きながら考える。
深く思うほど嫌なことばかりで目を強くつぶった。
 

そのせいか木の根本に足を引っかけたのだ。
勢いよく地面に叩きつけられる。

「ぶっ」 「がっ」

二人の声が重なった。
それも不気味なハーモニーを醸し出しいている。

地面に倒れたかとおもったら何か温かい。
目を擦って見るとあのメンタリスト。

「ゲン⁈もう戻ったの?」
「は、Aちゃんこそなぜここに…⁈」

私は転んだ際ド手前にいたゲンに気づかず
彼をドミノのように押し倒してしまったのである。

もちろん、恋愛が始まるようなロマンティックな
感じではない。かなりダサくこけた。

とりあえず事情をちゃんと伝えた。
二重スパイのことも。

本当は二重スパイに見せかけて三重スパイを
するつもりなのだが、実質このメンタリストは
すぐに心の内を見抜く。

できれば今は出来るだけ近くにいなかったので
説明が終わると押しのける形で司帝国へ向かった。

2→←二章 Triple spy.



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作者名:紙崎 | 作成日時:2020年2月22日 0時

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