Episode156 ページ7
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すぐ親が来るかもとか、そんなことを考えられるほど頭は働いていなかった。真っ先に浮かんだから電話をかけてしまって。
「……米屋、」
『ーー亜桜？』
受話器の向こうからは、ひどく驚いた米屋の声。
タッタッタッ、ガララララッ
電話を終えて間もなく、廊下を走る音、勢いよく扉を開く音が鳴り響く。そしてゆっくりとベッドに近づいてきて、ぽん、と私の頭に手を置いた。
「おはよ、亜桜」
「……うん。おはよ」
そのまま米屋は、さっきまで太刀川さんが座っていたイスに腰掛けて会話を続けた。今いる場所が病室なんかではなくて、いつも一緒に過ごしてきた教室の中なのではないかと錯覚するほど、普段通りに接してくれる米屋の態度に心底救われる。
「体痛くねーの？」
「うんまあ……怪我とかは痛くない」
怪我は、痛くない。しかし、ずっと体が変で。起きてすぐだからかもしれないが、いつもよりもサイドエフェクトの調子が悪い。というか痛くないこともそのせいだろうし。痛覚に対して普段よりも鈍すぎるというか、加減が明らかにいつもと違うのだ。鋭かったはずの嗅覚も鈍っているのか、嗅いを全く感じない。
「けど、頭がちょっとさ」
ひどい頭痛が収まらなかった。ザワザワザワ、と誰かの囁くような声が大勢聴こえて、うるさい。目がチカチカして、たまにフラッシュバックみたくその辺の風景が視える。
『いないんだよ、お前の親友なんて最初から』
『だからあんたが殺して』
『ーーちょっとだけ……楽しかった』
ザワザワザワ、ザワザワザワ……
酷くうるさくて、私は両耳を塞いだ。それでも収まらず今度は逃げるように、私は目を閉じた。ああ、奈那、奈那……
「亜桜」
ぴたっ
「……！」
米屋が私の名前を呼んで、私の耳を私の両手の上から塞いだ。すると途端にうるさかったものが静かになって、目を丸くした。
「米屋って魔法使いなの」
「お？マシになった？」
「うん」
米屋と顔を見合わせて笑った。
「……こうなるような気がしてたのかな」
「ん？」
「米屋に会ったら安心出来る気がして、たぶん電話かけたんだ私」
私は自分の耳から手を離して呟いた。米屋の手も一緒に離れる。
「米屋の声訊いて、安心したかった」
米屋は驚いた顔で私をしばらく見つめた。何か言おうとしたが、そのタイミングで廊下からタンタンタンッと走るような足音が訊こえてきて、米屋は「お」といつものいたずらっ子のような表情に戻った。
ガララララッ
米屋の時と同じように、勢いよく扉が開いた。
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亜桜(プロフ) - サクラさん» はじめまして、コメントありがとう御座います！！すごく嬉しいです……！こちらこそ数ある作品の中から見つけて下さりありがとうございました！ (2022年5月29日 1時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - はじめまして！作品一気に読ませていただきました。後半ボロ泣きしながら読みました。素敵な作品をありがとうございます！ (2022年5月24日 1時) (レス) @page50 id: 99a13ff01b (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - ペコの助さん» こんばんは、コメントありがとうございます！お言葉だけで大変光栄です。ありがとうございます。そしてご指摘大変助かります！見落としておりました;;なおしてきます！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - 最後に非常に申し訳ないのですが、（親友）の場所が（旧友）になっていて変換ができていません。意図的でしたらすみません。頑張ってください！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - こんばんは！つい先日、この作品に出会ってから一気に読み進めてしまいました。心理描写諸々、とても素敵で何回も読んでいます。本当は単行本、購入したいのですがまだ、親の目があり難しくとても悲しいです....。これからも応援しております！ (2022年2月8日 1時) (レス) @page50 id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2019年2月10日 13時
