Episode196 ページ47
Aside
桜が散る様子は、月日が流れる様子に似ている。なんて短い時間だったのだろう、と振り返って思う。私がこの場で迅さんや犬飼先輩を見送ったのが、つい昨日のように感じられる。
「卒業生、退場」
体育館を出れば、桜吹雪が快晴の下を舞っていた。
今日は、私達の卒業式。同時に出水の学校や、三輪の学校などでも卒業式が行われている。
「亜桜ちゃん！卒業おめでと〜」
「おめでとAちゃん」
「犬飼先輩！と迅さん！どういう組み合わせ？」
「さっきたまたま会っただけだよ」
フェンスの向こうから、去年の卒業生である犬飼先輩と、一昨年の卒業生である迅さんが現れた。私はそちらへ駆け寄る。どうやら二人とも母校ということで私の様子を見に来てくれたようだ。
「じゃおれ今から辻ちゃんのとこ行くから、お暇させてもらうよ」
「もう？写真だけ撮りましょ」
「いーね」
パシャ、とシャッター音が鳴って、撮り終わると犬飼先輩はひらりと手を振って去っていった。
「迅さんも撮ってください」
「もちろん」
パシャ、
あれ、迅さん、学ラン姿だ。……そうか今日は、迅さんの高校でも卒業式が行われているのか。二年生だから自身の高校の三年生の卒業式に出席したのだろう。そうか、今日、貴方も。……太刀川さんも、卒業したんですね。
「A先輩！」
「京介！」
「卒業、おめでとうございます」
「ありがと。……色々、世話になったね」
後輩の、京介がこちらに掛けてきた。うちの学校も、高校で新三年生が式に出席するのと同じく新三年生たちは全員出席する決まりがある。京介が太刀川隊に入ってから、二人で学校から太刀川隊の隊室まで行くこともあったし、学校で太刀川隊の話をすることもあった。彼にはいい思い出を貰ったと思える。
「さて。Aちゃん。主役の登場だ」
「え？」
迅さんに言われて彼の指差した方を見てみれば、私の動きは止まった。正門から入ってくる黒い学ラン、左胸についたピンクの花。筒状の卒業証書。まわりの中学生たちよりも大きな体で、そしてＡ級一位の独特の雰囲気を持つその人は、すでに周囲の視線を集めていた。その人は私の正面まで来て、卒業の証の筒を肩に乗せて、私から一瞬視線を逸らした。でもまたその目はこちらに戻ってきて、「あー……」と歯切れの悪い言葉を漏らす。
「ーー太刀川、さん」
「……卒業おめでとう、亜桜」
「！……太刀川さんも」
亜桜、と確かに呼ばれたそれが、胸を痛めつけた気がした。
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亜桜(プロフ) - サクラさん» はじめまして、コメントありがとう御座います！！すごく嬉しいです……！こちらこそ数ある作品の中から見つけて下さりありがとうございました！ (2022年5月29日 1時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - はじめまして！作品一気に読ませていただきました。後半ボロ泣きしながら読みました。素敵な作品をありがとうございます！ (2022年5月24日 1時) (レス) @page50 id: 99a13ff01b (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - ペコの助さん» こんばんは、コメントありがとうございます！お言葉だけで大変光栄です。ありがとうございます。そしてご指摘大変助かります！見落としておりました;;なおしてきます！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - 最後に非常に申し訳ないのですが、（親友）の場所が（旧友）になっていて変換ができていません。意図的でしたらすみません。頑張ってください！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - こんばんは！つい先日、この作品に出会ってから一気に読み進めてしまいました。心理描写諸々、とても素敵で何回も読んでいます。本当は単行本、購入したいのですがまだ、親の目があり難しくとても悲しいです....。これからも応援しております！ (2022年2月8日 1時) (レス) @page50 id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2019年2月10日 13時
