Episode190 ページ41
烏丸side
A先輩が、太刀川隊から抜ける。そんな日が来るだなんて考えたこともなかった。相変わらず先輩たちは俺にはっきりと遠征の話はしてくれなかったが、出水先輩や国近先輩は少しだけ話してくれることがあった。……近界民と、戦闘したと。それだけは訊いた。けれどどんな相手だったとか、A先輩が重症になったのは何故なのかとか、そういったことは訊けなかった。
「とりまるー?最近考え事多くね?」
「佐鳥。悪い、何か言ったか?」
「いや別に言ってないけどさ……ぼーっとしてるから」
「ああ……」
「太刀川隊のこと?」
「何か噂になってるのか?」
「ん〜〜、まあA先輩と太刀川さんの個人戦の話はわりと噂になってるかな」
基地の、ラウンジ。俺は同い年の嵐山隊のスナイパー、佐鳥賢とそこにいた。佐鳥は、確かA先輩と親しい間柄だったはずだ。
「大丈夫なの?A先輩」
そんなこと、俺に訊かれたって分からなかった。
「今回ばっかりは大丈夫じゃない……かもしれない」
「ええマジ?あの先輩が?何があったんだよ太刀川隊」
あの個人戦の日、太刀川さんは言った。A先輩が親友を斬った、と。どうして近界に親友がいたのか、あの日からその状況について何度も考えたけれど、結局確信には至らなかった。
ただA先輩が遠征にこだわっていたことに、その親友が関係しているのではないかという推測はできた。
例えば近界民に攫われたなどで、それでその親友を助けるために遠征を目指していたとか。けれど、何らかの事情でその親友と先輩が戦うことになった。もし、もしもそんな別次元のような真っ暗な出来事が先輩の身に降りかかったのだとしたら、あの先輩が作り笑いすらできない状況に追い込まれるのも理解できる。
そして、本当に太刀川隊を辞めてしまう可能性が十分に有る。
「俺が訊きたいくらいだな……」
「?訊けばいいじゃん」
キョトン、と佐鳥が俺の顔を見た。
「とりまるだって太刀川隊なんだから、訊けばいい話だろ?」
俺だって、太刀川隊。その言葉を、チームメイトでもない奴からハッキリと言葉として告げられることは初めてのような気がして、一瞬硬直した。そうか、外の人間から見ても、ちゃんと俺は太刀川隊なんだな。ちゃんと、あの人たちと同じラインに立っているんだな。
「……そうだな。出水先輩にでも訊いてみる」
「え〜出水先輩?」
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亜桜(プロフ) - サクラさん» はじめまして、コメントありがとう御座います!!すごく嬉しいです……!こちらこそ数ある作品の中から見つけて下さりありがとうございました! (2022年5月29日 1時) (レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - はじめまして!作品一気に読ませていただきました。後半ボロ泣きしながら読みました。素敵な作品をありがとうございます! (2022年5月24日 1時) (レス) @page50 id: 99a13ff01b (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - ペコの助さん» こんばんは、コメントありがとうございます!お言葉だけで大変光栄です。ありがとうございます。そしてご指摘大変助かります!見落としておりました;;なおしてきます! (2022年2月8日 2時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - 最後に非常に申し訳ないのですが、(親友)の場所が(旧友)になっていて変換ができていません。意図的でしたらすみません。頑張ってください! (2022年2月8日 2時) (レス) id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - こんばんは!つい先日、この作品に出会ってから一気に読み進めてしまいました。心理描写諸々、とても素敵で何回も読んでいます。本当は単行本、購入したいのですがまだ、親の目があり難しくとても悲しいです....。これからも応援しております! (2022年2月8日 1時) (レス) @page50 id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2019年2月10日 13時