Episode171 ページ22
米屋side
いつも、オレのクラスのほうが早く終礼が終わる。だからオレはいつも隣のクラスの前の廊下であいつを待って、それからあいつが教室から出てきて、一緒に靴箱へ行くのだ。
「ごめん、なんか席替えのくじ引き長引いた」
「おー、いい席だった？」
今日も同じだった。いつもより終礼が長かったけれど。そんな『いつも通り』がひどく懐かしく感じて、どうしようもなく安心した。こいつが遠征に行って、帰ってきても入院したままで、そのまま冬休みに入って。長い間、『いつも通り』が無くなっていたから。平穏のありがたさを、初めて知った気がした。
「いや教卓の前。最悪」
そいつが不満げに呟いて、オレたちは下駄箱へと階段を下った。
「久しぶりに来たら授業さっぱりすぎてさ、まじで学年末テストどうしよ」
その後の亜桜も普通だった。普通だから逆に不自然だった。家路を辿るそいつは、遠征のことを何もオレに言わない。何であんな怪我をしたのか、弾バカが自分を責めていたのか、ずっと遠征の目的にしていたあの親友のことは、どうなったのか。亜桜が目覚めたあの日は、ひどく弱って見えたのに。なのに今日のこいつはいつも通りに振舞っている。たの遠征は、そんなにすぐに立ち直ることができるような内容では、なかっただろうに。空元気ってやつか。
「まあボーダー推薦で高校進学はできるし、最悪テストやばくてもいいんじゃね？」
「……ボーダー推薦、か」
オレにはそんないつも通りの亜桜を壊す勇気なんてなくて、同じようにいつも通りに接した。何も言ってこないなら、何も訊かない。オレはいつもそうだ。下手に「何があったんだよ」なんて訊いて、必死に保っているこいつの心を壊してしまったら。それが怖くて、オレには何も出来ない。あいつから頼ってきた時に、精一杯応えてやることしか。
はあ、と白い息がそいつから吐かれた。
「私あした任務なんだよね」
「おー、明日から復帰？」
「そー」
亜桜はずっと任務を休んでいた。遠征が終わってから。遠征で何かがあって、その精神面を考慮した太刀川さんの判断で休んでいたのだろう。しかしついに明日、復帰するらしい。また、はあと亜桜が白い息を吐いた。
「トリガー使うのは、遠征以来だ」
少し不安そうな顔。
「……またベイルアウトしたりしてな」
気の利いた言葉を言えないのが、やっぱりオレだなと思う。オレにはこいつの不安を和らげることも何も出来ない。
「はは、しないよ」
それが強がりだってことに、半分くらい気付いていたのに。
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亜桜(プロフ) - サクラさん» はじめまして、コメントありがとう御座います！！すごく嬉しいです……！こちらこそ数ある作品の中から見つけて下さりありがとうございました！ (2022年5月29日 1時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - はじめまして！作品一気に読ませていただきました。後半ボロ泣きしながら読みました。素敵な作品をありがとうございます！ (2022年5月24日 1時) (レス) @page50 id: 99a13ff01b (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - ペコの助さん» こんばんは、コメントありがとうございます！お言葉だけで大変光栄です。ありがとうございます。そしてご指摘大変助かります！見落としておりました;;なおしてきます！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - 最後に非常に申し訳ないのですが、（親友）の場所が（旧友）になっていて変換ができていません。意図的でしたらすみません。頑張ってください！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - こんばんは！つい先日、この作品に出会ってから一気に読み進めてしまいました。心理描写諸々、とても素敵で何回も読んでいます。本当は単行本、購入したいのですがまだ、親の目があり難しくとても悲しいです....。これからも応援しております！ (2022年2月8日 1時) (レス) @page50 id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2019年2月10日 13時
