Episode168 ページ19
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彼はあまり基地の中をウロウロするタイプではないのか、バッタリ会うようなことも数えるほどしかなかった。思えば遠征に行くという話も直接した記憶がないし、当然いつ帰還しただのという話もしていない気がする。
「なんか入院してるって訊きましたけど」
「今日退院したよ。検診？」
「そーです」
にこ、と微笑んだ。今までほど上手く声や顔を作れなかったような気がした。彼が返答すると私は「そっか」と呟いて、彼のいる扉のほうへと歩いていく。隣に立って、でも彼の顔を見ない。
「ねえ菊地原くん。自分の力、好きになれた？」
呼ぶと、彼が私の方を見るのが横目に見えた。『いつか、好きになれるといいね』と。前にそう言ったのは私だから、その答えを彼に問うてみた。
「あんたこそどうなんですか」
「私は、……もう何も聴こえないよ」
目を見開いた彼を残して、私は医務室をあとにした。
―――菊地原side―――
『私は、……もう何も聴こえないよ』。
そんなことを言い残して、あの人は去ってしまった。その言葉の意味を考えたが、結局本人に訊かないと分かるはずもないな、と諦めた。単純に、SEが使えなくなったという意味だけでは無いのだろう。亜桜Aは、そもそも交流も多くなかったのだけれど、多くを語らない人なのだと思う。
「菊地原」
「風間さん」
廊下で風間さんに会った。風間さんが「検診か」と問うので、「そーですよ」と僕は返事をした。……ねえAさん、あんたが入院してる間に僕には色んなことがあった。突然この風間さんが、「俺の作るチームに入れ」なんて声をかけてきて。僕は風間隊に入ることを決めた。それで最近僕もＢ級に昇格して、もうすぐ正式に隊として登録する予定。
「……退院してましたよ、Aさん」
「そうか、無事でよかった」
オペレーターになる宇佐美先輩という人も風間さんも、あんたと知り合いらしいけれど、仲良いの？というか風間さんはランク戦で引き分けたなんて言っていたし、強いのか？いや遠征に行くくらいだから、強いのか。
『私は、……もう何も聴こえないよ』
何度もそれがリピートして、僕は顔をしかめた。
「変な人ですよね、あの人」
嫌味っぽく言っても、風間さんは黙って僕のことをちらりと見るだけだった。
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亜桜(プロフ) - サクラさん» はじめまして、コメントありがとう御座います！！すごく嬉しいです……！こちらこそ数ある作品の中から見つけて下さりありがとうございました！ (2022年5月29日 1時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - はじめまして！作品一気に読ませていただきました。後半ボロ泣きしながら読みました。素敵な作品をありがとうございます！ (2022年5月24日 1時) (レス) @page50 id: 99a13ff01b (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - ペコの助さん» こんばんは、コメントありがとうございます！お言葉だけで大変光栄です。ありがとうございます。そしてご指摘大変助かります！見落としておりました;;なおしてきます！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - 最後に非常に申し訳ないのですが、（親友）の場所が（旧友）になっていて変換ができていません。意図的でしたらすみません。頑張ってください！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - こんばんは！つい先日、この作品に出会ってから一気に読み進めてしまいました。心理描写諸々、とても素敵で何回も読んでいます。本当は単行本、購入したいのですがまだ、親の目があり難しくとても悲しいです....。これからも応援しております！ (2022年2月8日 1時) (レス) @page50 id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2019年2月10日 13時
